不動産の有効活用について(4)

賃貸住宅の空室が多くなっている地域では、
土地の有効活用としての従来の延長線上のアパート経営は、
限られた場合を除いて、ご提案できない場合が多くなります。

周辺地域に人を引き付けるような新しい施設が計画されていたり、
ある程度雇用者が必要な新しい工場等が近くにできる場合や、
新しい道路や鉄道等の交通機関が新設されて、
雇用能力の高い都市へのアプローチが改善されたり等の場合には、
住居の需要が見込めますが・・・

そうした、環境変化がない場合は、
余程資産を持て余していない限り、
また、いくら相続問題が喫緊の課題としても、
アパート経営は、ご提案できかねるメニューになりつつあります。

優良な融資先を見つけるのに一生懸命な銀行が後押ししてくれるといっても、
銀行が建設後のアパート経営の保証をしてくれるわけではありません。

長期の空室保証をうたっている建設業者さんも、
入居需要が落ち込めば設定家賃の引き下げを図るでしょう。
そうなれば、採算ベースがガラット変わってしまう場合も少なくないでしょう。


先週、ある勉強会で、高齢者の孤独死や病死、また自殺や殺人等による、
アパート経営のリスクについて学びました。

すぐに発見されずに亡くなった方の汚物や脂等体液が直下の階のみでなく、
さらにその下の階まで流れ落ち、その住人により異変が判明した事例。

ルームクリーニングでは、建物を解体して除菌までしないため、
部屋がきれいになった後でも異臭が消えず、細菌も除菌できず、借り手がつかない事例。

匂いが消えないため、クリーニング費用を払って一旦綺麗にした部屋を、
事件現場専門の清掃会社に依頼することになる場合も多いそうです。

専門業者は細菌・ウイルスの殺菌、悪臭の除去を行うため、
床を解体して現れた体液等が伝わっている柱や梁等を削ったり、
消毒用アルコールの50万倍超の殺菌力の薬剤で感染症への対応を図っているとのことでした。

様々な事例の生々しい映像による説明等は、
今後高齢化が更に進んでいく社会でのアパート経営の厳しさを想定させるに十分なものでした。
しかし、高齢者が増え続けていく日本の社会で、
高齢者を対象としないアパート経営は成り立ちにくくなると考えられます。
(もちろん、若い世代に特化した賃貸住宅も商品内容により成立するでしょうが)

孤独死に対する、大家さん向けの保険なども商品化されてきており、
生じる事態を正確に把握して、対処方法を事前に確立しておけば、
徒に不安がるものではないと思います。


また、起きたことへの対処だけでなく、
アパート入居者の孤独死をどうなくしていったら良いか等のソフト作りが、
今後重要なものになると思います。

国が進めていくサービス付き高齢者向け住宅には、
安否確認サービスや生活相談サービスの提供等が基本サービスになります。
孤独死等を考えれば的を得た住居と言えそうです。

また、もう少しコストがかからない方法で、
例えば、昔の長屋の良さを現在の住居に取り入れる試みもなども、
今後模索されていくものと思います。





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