マスコミの難しい立場と報道に対する責任について(3)

海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが、9日に機体トラブルで緊急着陸したことがニュースになっています。
藤村官房長官の11日午後の記者会見で、防衛省が米側に詳しい事実関係を照会する等の説明があったようです。
時期が時期なだけに、過敏になりやすい話題です。


さて、昨日の続きですが、単に事故率の記載がないだけで、新聞社の報道姿勢を批判するのは厳しいと思われるかもしれませんが、それが意識的にそうしていると思えてしまうため、ついつい厳しい見方をしてしまいます。

意識的ではないかと感じるのは次の二点によります。

事故率は、マスコミが調べようと思えば海兵隊に簡単に照会できるでしょうし、アメリカは兵器能力の多くを公開しています。労せず得られる重要データ(海兵隊からのデータに入っていなかったからという理由で?か)を公表しないということが一点。

そして、事故率はバスタブ曲線を描くという防衛大教授の言を、産経新聞が引用していることが二点目です。

バスタブ曲線というのは、配備当初は事故が多発しますが、その後低下する。また、老朽化していくと再び事故が多発するため、事故のグラフの形がバスタブのようなU字形になるというものです。
この意見を引用して、MV22オスプレイの事故率は今後低下する見通しだが、普天間に配備中のCH46には老朽化による事故が多発しかねない危険もあるとしています。

この主張をするのであれば、それこそCH46の事故率を示さなければアンフェアーではないかと思います。


と思っていましたら、その後、NHKが報道番組の中でCH46の事故率を出していました。
事故率は1.11とのことでした。

やっぱりという気がします。
現機種CH46の事故率はオスプレイよりも低く、海兵隊の機種の中でも安全な機種なのです。


高性能を謳い、高性能機種への転換を後押ししようと考えるため、都合の悪いデータは引っ込めるという姿勢は、ジャーナリズム精神から遠いように思います。

事故率1.11の現機種を事故率1.93の新機種に換えると言えば、地元の反対は増すでしょうが、その上で、能力の劣る機種にこだわり続ければどういう事態を招くことになるかを、客観的に冷静に論説するのが良識派を謳う新聞社のスタンスではないかと思います。

都合の悪いことや本来の意図は隠して、都合のよいデータのみ公表して政策を立案する官僚。
やはり都合の悪いことは国民には知らせずに、その法案を通してしまおうとする政治家。

原発事故の際の、政府や東電による国民へのデータ隠し。


データを都合よく使うマスコミの姿勢は、上記と相通ずるところがあるように思えますし、上記を批判する資格に欠けることになってしまいます。



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