中学2年生の頃

中学2年生の時の同級生のS君は剣道部でした。

S君は体格は良くて、外見は不良っぽかったですが(尖った当時の男子生徒の服装等は同じようなもので、私も同様でした。今から見ると可愛いものですが)、性格は温厚な方でした。

なぜか、このS君が同じ剣道部の先輩(3年生)に目をつけられて、部活が終わってから制裁を受けるようになりました。

卒業式が近付くと、このS君に関して校内で噂が広がりました。
卒業式終了後、S君が剣道部の3年生全員から袋叩きにされるというものです。竹刀ではなく木刀も用意しているらしいとも噂されていました。

私は親友だった、野球部のI君と一緒に、S君を伴い、担任の先生のところへ相談にいきました。
私達の担任は、先生達の中では頼りがいがあり、気骨もあり、一番まともな先生でした。

相談した時の担任の返事は簡単なものです。
3年生の2年生へのお礼廻りは年中行事だ、というものでした。


私達には、他に相談しようとする大人はいませんでした。
以前剣道部にいたことのある悪仲間のH君に事情を話してみました。
H君の兄は、在学していた頃は、先生達も怖くて手出しができない程の存在で、当時小学生だった私の耳にも、人づてで鑑別所や少年院に入るような噂が入ってきたりしましたが、結局入ったのは正規の組でした。

弟のH君は剣道部を退部してからは部活もやらず、他の中学校の生徒を何人も部下にして引き連れて、道路を塞ぐように並んで歩き、車を止めてしまうような男でしたが、根は非常に純粋で、先生達のH君への認識と態度はおかしいと、私は常々思っていました。

H君は校外ではやんちゃなことをしていたようですが、クラスの中では表立って暴力行為を行うような男ではなく、心根の優しいところがありました。

H君は、自分の居場所を学校内に探そうとしていたと思います。しかし、勉強が苦手で怖い兄がいるH君は、先生からは敬遠されてしまいます。ちょっと目立つことをやってしまうと、先生方は札付きの悪に対応するような、決して心を開くことのない頑な姿勢で接します。
そんな姿勢で接してくる大人に、心を開こうとする少年はいないでしょう。

私は、自分の思いをうまく表現することができませんでしたが、学校でのH君のことはずっと気になっていました。H君に対する先生方の対応や言動をみては、違うんだよ、そうじゃないんだよ、どうして大人って理解しようとしないのだろうと、もどかしい思いをしていました。


S君もH君もそうですが、ポーカーフェースな友人は先輩や先生から嫌われるようなところがありました。
脅されても、どこ吹く風と言う感じに見えるため、それが相手の癇に障るのでしょう。
そのため、喧嘩に巻き込まれることも多かったと思います。

ある日、H君が喧嘩をした時、多分脅しのために持っていたナイフでしょう、学生服のポケットから出したナイフで相手を怪我させてしまったことがありました。
大した怪我ではありませんが、学校は大騒ぎになり、H君が殺傷沙汰を起したといった受け止め方をされました。





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