いじめとホームスクーリング等の制度設計について

アメリカでホームスクーリングという教育形態が増えているそうです。

子供が学校に行かずに自宅で勉強するという教育制度ですが、その子供達にその制度を利用させる理由は一様ではありません。
英才教育であったり、宗教的信条の理由であったり、学校内の治安に対する懸念であったりします。

この教育形態は、元々は、黒人への人種差別が撤廃されたことで、黒人と一緒に机を並べるのを受け入れられない白人が始めたと言われているようです。(何かアメリカらしいですね。KKKなどを連想してしまいます)

その後も、アメリカでは教育の場で親に大きな不安を与えるような事件が起こります。
大麻の売買が行われるような学校があったり、
銃の乱射事件などがあったりと・・・・

このように、親が自分の子供を学校に通わせるのに不安を感じたりする場合、子供を学校に行かせずにこの制度を利用します。


この制度の恩恵を受けている子供の中では、例えば10歳の子供が大学生並みの知識を得ていたりと、学力の面では、学校に通っている子供達よりも、大学進学標準試験や大学進学適性試験等で、ホームスクーリングの生徒の方が平均点が高いそうです。

99年には約85万人だったこのホームスクーリングの子供は、2007年には約150万人にものぼるということですので、その存在は今や特別な例とは言えなくなっているようです。

先生役の9割は母親で、元々の制度が始まった理由からか、導入世帯の77%が白人世帯だそうです。

母親が子供の教育のキーになる訳ですので、親の能力も高く、また裕福な世帯でないと、こうした制度を利用できないのではないかと思いますが、
この制度に対して、例えば、コンピューター製品や文房具を購入する際などに助成制度があるそうです。

この制度運営には、とても難しい面もあるように思えます。制度の利用を認めるのには、家庭環境や親の資質も見抜く必要があると思うからです。
ちょっと前に日本で起きた事件で、子供を学校に行かせないで母親が自分の娘を風俗で働かせていたなどということがありましたが、親や家庭環境によっては、この制度を悪用される場合が考えられます。

アメリカは州によって法律も異なったりしますが、
各家庭は教育方針を年4回程度教育委員会に提出しなければならず、小中学生相当の子供は、隔年に学力試験を課されたり、また、学校の授業の一部に出席を求められる例もあるそうです。

親の教育放棄が発覚すると、親は教育委員会に厳しく指導されるそうですが、アメリカではこうした制度運営に関して厳しいフォローを行っているようです。

制度利用者が2007年で約150万人ということですので、5年後の本年では、200万人近くなっているのでしょうか。

このチェック、フォローをどのような体制で行っているのか、とても興味のあるところです。
といいますのは、日本においては、約210万人の人が生活保護を受給していますが、そのチェックがなされないために不正受給者の問題が社会的に大きくクローズアップされています。
このチェック・フォローはそんな簡単なことではないのは分かるのですが、アメリカのホームスクーリング制の運営も、極めて手間暇がかかり、大変な作業ではないかと思います。

アメリカの行政の手続きや業務手法等を研究することで、日本の行政の仕事の仕組みや制度に、業務を行う上で非効率な面がないかどうか、仮にあるならば、その改善点が見えてくるのではないかと思います。

こういう切り口で問題を改善していこうとすると、日米での公務員の数が違うといった紋切り型の意見が出てきて、比較のベースが違うため批判には値しないといった反論をもって議論の打ち切り、思考停止状態となることが、この国では大変多いです。

ベースが違うのであれば、それをウエイト付けするなり考慮した上で、日米の行政コストの点、税の負担率の点等々、さらに議論を深めていって、どこを改善していけば良いかを探っていくべきと思うのですが、残念ながら議論が深まることなく、すなわち、解決策にたどり着くことなく、不作為に推移してしまうことが日本では極めて多いように思います。
その結果、一例として、子供の自殺が止まらないということにつながります。





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