思考訓練と思考停止(3)

相手が嫌がることを発言したり、行動したりするのは、嫌なことです。
誰であっても、できれば、相手が反発するようなこと、相手の反感を買うようなことは言いたくはないでしょう。
しかし、国際社会は儒家の影響を受けたり、仏教の影響を受けたりした温和な国ばかりではありません。

儒家の発信地でありながら、その思想を拭い去っている国もあります。

仏教を信仰する暴力を嫌う敬虔な民族を、抵抗しないからこれ幸いと言わんばかりに、虐殺の限りを尽くして武力で制圧した国もあります。

遠慮する相手にはとことん強権をもって、領土を広げようと虎視眈々と狙っているのが国際社会と考えるべきでしょう。
世界の警察官とも言われることのあるアメリカでさえ、見方を変えれば似たような面があります。

自分の国は自ら守るという気概を持って、嫌な仕事でも、政治家や官僚は粛々とそれを行うことが仕事なのです。
それが嫌なら国を背負うのは止めた方が良いでしょう。

そうは言っても、感情的に相手に反発したり、相手を拒絶しようとするのは、相手を徒に刺激するだけで、何の解決にもならない場合が多いものです。


現在、竹島問題が日韓で炎上していますが、ここでは尖閣の問題を考えてみます。


福岡県の古賀氏は、1895年(明治28年)に政府から尖閣諸島を30年間にわたり借りうけました。

ここで、鰹節工場やアホウドリの羽毛工場を設置したというのは良く知られていることですが、
この当時の尖閣諸島に多い時は300名弱もの島民が暮していたそうです。
その当時、あの島で、300名もの人の水や食料等の確保は大変だったことでしょう。

しかし、当時300名弱の島民が住めた訳ですので、現在の生活資源の補給能力を考えれば、島の利用価値はいろいろな可能性が考えられることでしょう。

その後、1932年(昭和7年)に古賀氏の長男が大正島を除く尖閣諸島を国から払下げました。
第二次世界大戦中の1940年代前半に、工場の事業を中止したことから無人となりました。
その後、1970年代に埼玉県内の親交のあった方に売却しました。
週刊誌の記事など読みますと、現在の埼玉の地主さんは日本の国土のことを大変真剣に考えられている思慮深い方のようです。

石原都知事は、国会議員の頃から、古賀氏や現所有者と接触していたようです。
都が尖閣を購入するというのは、
政府が事なかれ主義(購入して、現状と同じく不作為のままに捨て置くことで、敵対勢力の批判や反発を交わそうと考えていると思われます)や、人気取りのために、尖閣を地主から購入するのとは、腹の据わり方が異なっていると思います。


1968年(昭和43年)に尖閣諸島付近での海底調査で石油や天然ガスなどの大量地下資源埋蔵の可能性が確認されてから、中国や台湾が尖閣諸島の領有権を主張し始めました。

中国の領有の根拠は、
尖閣諸島は「明代から中国の領土で台湾の付属島嶼(とうしょ)だった」というものです。
つまり、尖閣諸島は台湾の一部であり、台湾は中国であるので、尖閣諸島も中国のものだという論理です。

(沖縄も中国の属国だったので、沖縄は中国のものだとも言っているようで、とにかく日本から奪えるだけ領土を奪えというのが本音のように思えます。実際、日本などやがて世界地図から無くなるという意味のことを、李鵬首相がオーストラリアの首相に発言したと話題になったことがありましたが、ここでは、冷静に中国の建前上の上記根拠について考えてみたいと思います)


感情的に相手に反発をするのは、火に油を注ぐことになる場合が多いのですが、冷静に相手の主張とこちらが把握している事実とを比べて、論理構成を築いていくことが、例えすぐには解決の糸口にならないまでも、私達が行うべき必要最小限のことに思います。

事を曖昧なままに捨て置くことは、昨日も記しましたように、時間の経過とともに非常に大きな禍根を後世に残すことになります。





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