自立しにくい精神性

陸上自衛隊と米海兵隊は、22日に米領グアムでの離島防衛のための共同訓練を公開しました。
敵に奪われた離島を奪還するシナリオで、島に上陸する場面を報道関係者に公開したものです。

公開されたものは、22日の朝、グアム島西部の米海軍基地内の海岸で、陸自海兵隊の隊員が同じゴムボートに乗って上陸。陸自隊員は、付近を制圧する想定で小銃を構えて移動した、という訓練内容です。


この件に関する日本のマスコミの報道は、『陸上自衛隊は「特定の国や島を想定していない」としていますが、尖閣諸島をめぐる日中の緊張が高まる中、中国にとっては刺激的な訓練となった』というものです。

一頃と比べますと、マスコミの報道姿勢に見られた、隷属意識とも、他者依存の思考偏重とも言える、その性向ぶりは大分薄れてきているように思います。
以前でしたら、中国を徒に刺激するこのような行動は慎むべきではないでしょうか、とか、アジアの国を不安にさせる軍事行動は行うべきではない、とか、このように煽るようなことをして、平和が保たれるのでしょうか、等々、訳知り顔で、能天気な平和主義的な論調が目白押しになるところですが、、

この従来の報道姿勢が変わりつつある傾向は、国民の意識の方が、マスコミや多くの政治家達よりも良識的なものになっているため、マスコミが内に秘めた本音を出せなくなってしまったからではないかと思います。


以前は、国民が知り得る情報は限られていました。
民は之に由らしむべし。之を知らしむべからず。
この国では、このべしと、べからずを、可能形でなく命令形として解釈したまま、官の民への態度が中央集権国家の体質となってきたようなところがあります。
そのため、情報は民には提供しない、物事の判断を民にはさせない、官に依存させるという、自由主義国家を標榜しながらも、まるで社会主義国家のような、おかしな国に仕上がったようなところがあるように思います。
その結果、肝心なところで考えることを止めてしまう。オピニオンリーダーたるべき人達までが、思考停止に陥り、奇妙な依存心で凝り固まった壁のようになってしまうのです。

現在では国内で起こる事件でも、世界の冷徹な視点ではどう見られているものかということを、簡単に知ることができるようになりました。
日本の環境にある特殊性による性向を、外部の客観性の指標でもって眺めることができるため、しがらみや利害関係に左右されやすい政治家やマスコミ関係者と比べたら、私達一般国民の方が、はるかに自由に物を考えられ、単純に曇りなく物を見ることができるようになったのが現代社会だと思います。
もちろん、グローバルスタンダードがいつも正しい訳ではありませんが、自分の物の見方を、マジョリティの視点であれマイノリティの視点であれ、他者の視点で突き放して眺めてみることは、とかく一時の利害に左右されやすく、経済至上主義に走りやすい先進国として行動しがちな私達に、大切な観点を喚起してくれるきっかけにもなります。


中国メデイアの報道によりますと、21日に中国海軍の東海艦隊が、東シナ海で島への上陸作戦を想定した実戦演習を行ったそうです。

昨日のエントリーで触れましたように、同じ21日には、習近平国家副主席が、南シナ海での領有権問題を平和的に解決するとして協調路線をアピールしています。
同日の実戦演習は、もちろん南シナ海ではなく、東シナ海を想定した演習、尖閣諸島上陸のための演習でしょう。
中国の目は、アメリカの反応がどうかにあると思います。

さて、こうした状況下にありながらも、翌日の日米の合同演習に対して、マスコミや進歩的知識人などと呼ばれた人達、一部政治家にもみられましたが、ある世代のある特定の人達には今尚隷属意識に左右されている人達も少なくないことでしょう。
中国を刺激することになるのではないかという、強いものに対する御注進のごときねじれた精神性と、その活動によって名前を売り、力を得て、生活の糧を得てきた人達は、不本意ながら、風向きが変わったため、他の運動に鞍替えしようとしている人達の話も聞きます。

大きな声に惑わされる人、大きな声に飛びつこうとする人。





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