とりあえずの船出

昨日、自民党の新総裁に安倍晋三氏が選ばれました。安倍氏は決選投票で争った石破氏を幹事長に選びました。

保守本流の正統派の顔ぶれです。国家の存在に関する基本的なこと、また「成長戦略、教育再生憲法改正」等、今の日本に欠落してしまった重要な事項を核にしています。
ひとまず安心できる政党への脱皮が期待できるように思います。

長老派が自分達の言いなりになるので推していたといわれていた候補が選ばれなかったことは、自分達の利害よりも国難に立ち向かうべきとする良識が、まだまだ自民党内には通用するということなのでしょうか、それとも長老の推す候補では選挙に勝てないという自らの選挙に関する利害を考えてでしょうか。
多分両方なのでしょう。

長老達も全盛期に政治の最前線で四苦八苦していた筈なのに、今の政治状況が長老政治をきめこむほど簡単な状況ではないことくらい、十分解りそうなものと思いますが。

長老も、影で影響力を発揮しようなどと姑息なことを考えず、自らの命と私財をなげうってでも国のために奉仕したいと思うのであれば、自分の言葉で自らが率先して行動を起こすべきでしょう。

もし、その気がないのならば、速やかに議員バッジを外して欲しいと思います。
こうしたキングメーカーを気取ろうとする長老がまだまだ跋扈している自民党ですので、安倍-石破体制の今後の党運営も大変でしょう。


安倍氏は、首相時代は自らの健康問題の他、周囲にがんじがらめにされて、思った運営ができなかったと聞いています。
保守本流ホープと期待されていた安倍氏は、首相になって、派閥・長老支配の自民党からの脱却を目指していたと思いますが、その姿勢が派閥の長などの長老から冷ややかな目で見られ、嫉妬もあり、結果自民党内からも足を引っ張る勢力の存在というと言い過ぎでしょうか、協力を得られないという面があったように思います。

また、自民党政治に倦んできていたマスコミのなかには、もともと親中国、親韓国の勢力が強いため、この人達の反発も凄まじいものがあったと思います。背景を知らない人達は、安倍氏を何もできずに政権を投げ出した無責任な人と思っている人も多いのではないでしょうか。

別に、安倍氏も、喧嘩をしようというのではなく、当たり前のこと、言うべきことをきちんと言っていこうという姿勢で、マスコミの多くの報道姿勢(まともなマスコミもありましたが声は小さかったと思います)である、言いたいことをも遠慮する土下座外交のごとき姿勢こそ、国を危うくするということを言っていたのだと思いますが、マスコミの安倍バッシングは酷い様相を呈していたように思います。

何かあると、中国・韓国に御注進のような倒錯した報道姿勢も見られました。どこの国のマスコミ(官僚にも言えます)かと苦々しく思うことも多かったのですが、それが国民の多くの当時の民意だったのでしょうか。こうした姿勢とモーメントが、後の民主党への圧倒的勝利を呼び込んだと思いますが、この間マスコミが民主党政権を作り上げたと自慢するマスコミ人も多く見てきました。

安倍政権の頃、政治家の事務所費問題や消えた年金問題などが発覚し、マスコミは激しく安倍氏の責任を追及しましたが、後に民主党も全く同じことをやっていたことが判明しても、マスコミの追及はほとんどないに等しい状況でした。
安倍政権は、短期間の中で、国民投票法防衛庁の省への昇格、教育基本法改正など、国の骨格を形作った成果をあげていますが、マスコミからは抹殺されたような印象でした。
今回も、マスコミは、私達は頑張っているのですよと目を中国に向け、安倍バッシングを展開することでしょう。

安倍氏の方でも、今回は、周囲や官僚の中での敵味方も把握できているでしょうから、前回の轍を踏むことはないと思えますので、周到な準備とともに政権奪取に向かってもらいたいです。

自民党が、ひとまずまともな体制になりつつあります。

橋下氏率いる維新の会も、しがらみ政治と無縁な鮮烈な力を発揮する余地があるように思います。
しかし、政党の体をなそうとするあまり、あまり二線級の議員を抱え込んだりすると、墓穴を掘ることになりそうな気もします。二線級の人間ほど論功行賞にこだわりますし、次回の選挙の前から維新の会に入っていたことで、本流意識を強めたりすると、分裂の要因にもなりそうに思います。
また、マスコミが気まぐれなブームを仕掛ける風潮に乗っかって、玉石混交の石ころ達がどどっと転がり込んでくることもあるでしょう。
世帯が大きくなった時に、組織をどう取りまとめていくか、橋下氏の手腕にも注目したいと思います。


ともあれ、自民党、維新の会、民主党の中の良識派、それぞれはまともでも、現実は複雑な問題が多いので、みんながまとまって、出来上がったものは合成の誤謬ということにもなりかねません。


さて、自民党の顔が安倍氏に変わるや、早速中国が日本に対して警戒感を表明しました。

安倍氏は中国への対応について、「まずは尖閣(諸島)、領海をしっかり守っていく意思を示す」、そのうえで、「日本は輸出で利益を上げ、中国も日本の投資で雇用を作っている。切っても切れない関係だ。お互いにお互いを必要としている」と発言しています。
この考え方は、とても重要なことで、世界平和へ向かうための基本原理だと思います。
国と国によっては、販売利益と投資であったり、輸出の利益と資源であったり、高齢化と労働力供給であったりと、様々な組合せが考えられます。
国と国とがそれぞれの強みによって、お互いを補い合っていくのが国際社会の平和的共存共栄の原理と思います。

こうした大人の姿勢を中国は理解できず、日本の製品のボイコットや、資源の輸出の禁止等の強硬策を強めてきています。
また、職がない地方から大都市に集まってきた国民の、中国政府への不満を、対日デモや嫌日、排日運動へと焚きつけては、政府にまで不満が向かいそうになると民衆を鎮圧するというマッチポンプの繰り返し。

今回の件に起因して、今後、倒産する日本企業もたくさん出てくるでしょうし、それを受けて、産業界からの政治への圧力も強くなることでしょう。


プライドが高いために素直になれない隣人との共存共栄は大変ですが、矜持を置き去りにしてしまったかの民族のアイデンティティー探しも辛いものがあります。







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