不愉快さの許容(2)

中国の一人っ子政策により、二人目以降産まれた出生届をしなかった子供達。

戸籍上、黒孫子はどこにも存在しません。
国民として認められているわけではありませんので、学校教育や医療などの行政サービスも受けることができません。

一人っ子政策では、一人っ子の家庭は様々な恩恵が得られる一方、二人以上の子どもができると、両親ともに昇級・昇進の停止、学校への優先入学権の剥奪、各種手当ての停止等により、待遇に大きな差が出ると言われます。

この待遇を維持するために、二人目以降の子供の出生届を出さない家庭が増えたのです。
特に、労働力を必要とする農村地域において、こうした傾向が強いと言われています。
農機具等が揃えられない農村では、人手が重要な道具です。
一人っ子政策実施以降、子供は男の子を重宝する傾向にあり、産まれる前に胎児が女の子であると判明すると、中絶するケースが多くなったと言います。

人口統計上の客観的データで、こうした実情を裏付けられるものかと思い、以下調べてみました。
産まれた時の、男女の出生比率が、国によって違いが出るものでしょうか。
数字に大きな差がある場合は、何らかの事情が働いたと考えられます。

下記はCIAのサイトからの転載です。(無断転載ですが、、)
いくつかの世代ごとに数字が出ていますが、出生時点の比較にとどめました。それ以外の時点での比率に興味のある方は、下記URLにて閲覧してください。
青年期・壮年期の数字は、紛争のある国では、男性の比率は低くなるでしょうが、出生時では、栄養状態が悪い国でも、数字が大きく変わる程の差異は出てきません。
栄養状態が悪い国では、男性よりも本来女性の方の個体が強いと言われますので、男性の数値は若干下がると思いますが、下記比率では顕著な差が出ていません。
この数字が他国と比べて大きな違いのある国というのは、何らかの事情を抱えていると考えて良いのではないでしょうか。

https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/fields/2018.html#xx

Sex ratio: at birth: 1.07 male(s)/female(世界平均です)

以下、参考になりそうな国(というか、自分の知っている国ですが)の数字をコピペしました。

Canada at birth: 1.06 male(s)/female
Cuba at birth: 1.06 male(s)/female
Dominica at birth: 1.05 male(s)/female
European Union at birth: 1.06 male(s)/female
Germany at birth: 1.06 male(s)/female
Japan at birth: 1.06 male(s)/female
Korea, North at birth: 1.05 male(s)/female
Korea, South at birth: 1.07 male(s)/female
Thailand at birth: 1.05 male(s)/female
United Kingdom at birth: 1.05 male(s)/female
United States at birth: 1.05 male(s)/female
Iran at birth: 1.05 male(s)/female
Iraq at birth: 1.05 male(s)/female
Ukraine at birth: 1.06 male(s)/female

見事に、大数の法則がはたらいていると思いますが、以下は数字の開きが見える国です

Uganda at birth: 1.03 male(s)/female  低い数字です。今尚、紛争地域です。
以前女子中学生100人ほどが愛人にされるため誘拐されたなどということがありました。エボラウィルスも話題になります。
Zambia at birth: 1.03 male(s)/female   低い数字です。HIV感染率は15%以上。平均寿命は男性38.53歳、女性38.73歳



Vietnam at birth: 1.12 male(s)/female
India at birth: 1.12 male(s)/female
数字の高いこの両国。何かの事情があるのではないかと感じさせます。


さて、肝心の中国です。

China at birth: 1.13 male(s)/female

中国の男子の誕生割合は、他の国と比較しますとずいぶん高くなっています。
これは、前述したことを鑑みると、産まれるべくした女子が、誕生前に命を絶たれたと考えるのが妥当ではないでしょうか。
ベトナムとインドの数値も高いのが気になります。機会があれば調べてみたいと思います)


また、中国福建省の北部では80年代から90年代にかけて、一万人以上の乳幼児が仲介業者に売られたと言われています。
子供が生まれると密輸業者がやってきて、子供達を中国国内の富裕層や外国へ売り飛ばしていると言うのです。

最近ではハリウッドスターや世界的歌姫が養子を迎えるニュースもあります。健康で陽気な子供は外国でも人気があることでしょう。

ちょっと脱線しますが、ストリートチルドレンと呼ばれる子供達が目立った東南アジアでは、体が健康でなくても、肢体不自由な子供でも売買されていたと言います。
この場合は臓器ブローカーによる売買で、子供達は内臓摘出のために売買されます。子供を安く買って、使用可能なあらゆる内臓を摘出して、それぞれを高く売るのです。
身体等不自由な子供を抱えた母親は、子供が裕福な家庭に引き取られて幸せになってくれると信じて、お金を手にするのでしょうか。
父親は、女性の体を通り過ぎただけの日本人というケースも多かったと聞きます。

iPS細胞の研究成果により、臓器移植をしなくても臓器を再生できる治療法が早くできたらと思います。


国別の、Sex ratio at birth の数字を一つ一つ見ていくと、言いようのない感慨が湧いてきます。
同じ姿・形の人間ではありますが、
気候も違い、食べるものも、風俗も違い、生活様式も異なり、DNAにも差があり、歴史も違い、民族が違い、、、
それなのに、Sex ratio at birth は一定の数字に集まっています。
世界平均では1.07です。この平均が国別の単純平均なのか、人口によりウエイト付けしたものなのか分かりませんが、後者であれば、人口の多い中国やインドの数字が高いため、平均を引き上げていると言えます。

綺麗な数字です。数が増えれば増える程、ある数値に近付きます。
こうした大数の法則の背後の力を感じる時、背後にある深い世界に敬虔な気持ちを抱くとともに、人間というのは何と平等な存在なのだろうとつくづく思います。







'