憧れの地の大いなる幻滅(6)

表題から外れてしまっていますが、マスコミの問題を続けます。

BBCが公正な放送と謳う証左として、
第二次世界大戦中もイギリス軍を「我が軍」とは呼ばなかったこと、また、アメリカ同時多発テロ事件を「テロ」でなく「攻撃」と報道したこと、などがあげられたりします。

他方では、BBCに対しての批判も当然あります。

BBCの欧州連合に関する報道が否定的である、とか、
イラク戦争の報道が偏っていた、という批判もあります。(イギリス政府の立場に立ち過ぎているということのようです)
米英連合軍によって開始されたイラク戦争をAmerican invasion of Iraq(アメリカのイラク侵攻)とイギリスが当事者でないかの報道をしていたと批判されます。スタンスが明確でないということでしょう。

その他、政治に対してシビアに物を見るため、政治家を馬鹿にしがちであるとか、
メディアに過ぎないのに、まるで野党のような振る舞いが鼻につくとか、
キリスト教徒に批判的過ぎるとか、
さぞ、批判の対象となっている政治家等からすれば、腹立たしいことでしょうが、距離を置いて報道する姿勢というのは重要ですので、こうした批判を浴びるのは、ジャーナリストならではのことでしょう。

これらは、政治をジャーナリストの目から厳しくチェックしていくという姿勢が強いためで、ある意味羨ましい所でもあると思います。


この他、いろいろな問題が提起されており、それらは日本のNHKに対する批判と似ているところがあります。
BBCにも、収入が安定しているため、デジタル放送に過剰投資しているとか、大衆受けするような番組を作っている等の批判があります。
放送作成の担当部署からすれば、当然のことと思いますが、視聴率が良かった番組があると、その焼き直しのような番組を作成すれば、当たらずとも外れないだろうというのは、作成側の安全を見込む心理ですが、そこを批判されたりもしているようです。日本でも同じですが、予算規模が大きいのに、民放と同様な番組を作られると、民放側からすると民業を圧迫しているという批判です。

どこの国でも問題とされる可能性があることと思います。

さて、番組内容をチェックする際に、番組の種類を、私は次のように単純に割り切って考えています。

1)視聴率を取るために、視聴者が喜んで見そうな番組を作ろうというのが主たる製作動機。放送エリアの民度に合わせて視聴者の関心・レベルをリサーチして、そこにはまる番組を制作する。
視聴率競争に煽られるのが製作現場で、報道番組も含めて民放の番組の多くは、こうしたスタンスで作らざるを得ないところがあります。
質の良い番組も作られますが、低俗な番組も作られます。どちらにしても視聴率の高い番組が良い番組になります。

競争原理が働き、切磋琢磨する力が働く場合がありますが、製作費を切りつめられると安易な方向に走りやすくもなります。

2)視聴者の人生を充実させるため、豊かな社会を築くために見て欲しいと考える番組。
公共放送にとって(民放でも)、大変作り甲斐のある範疇だと思います。

動機は高邁なものでも、地味に生真面目に番組を作ったのでは、なかなか見てもらえません。せっかく質の良い番組を作っても見てくれる人がいなければ何もなりませんので、視聴者の興味を惹くような仕掛けを番組の中に盛り込み、視聴者が番組に引き込まれ、見終わると製作者の意図・慧眼に思わず唸ってしまうような番組。
視聴率を上げることを目的とはせず、視聴者の知力、思考力、知識欲がアップするような番組で、民度を上げていくのに貢献する番組。
ここで、視聴者の興味を惹く仕掛けが評判になってしまうと、民放から民業圧迫などと批判されますが、本質はその内容がどうかが問題で、視聴者に伝えたい気持ちがさほど強くない番組が多いと、存在価値を問われることになります。


3)視聴率などの市場原理の影響を受けずに、視聴率は高くはないが、ある一定の視聴者が見込める教育番組や、色々な障害を持った人、高齢者などを対象とした番組。ニュース番組等。

これも、公共放送が担うべき範疇です。


この他、とても困った分類に入る番組もあります。

4)視聴者に見てもらうことで情報操作を行い、ある特定の組織にとって有利な方向に持っていくための番組。
これは、真面目なニュース番組から、ドラマや娯楽番組まで広いジャンルに渡って行われています。

具体的には、
情報の隠蔽を目的としたり、生じている問題の基本的な原因のすり替えを行ったり。
また、マスコミが嫌う対象者の評価を貶めるような発言や映像を、前後の脈絡を無視して切り取り、何度も繰り返して放映することで、視聴者に間違った評価を与えること。
報道の最後に、公平に吟味した訳ではないのに、マスコミの思惑と思える批判的言葉でしめることで、その語感のニュアンスから、視聴者にその問題の原因に間違ったイメージを植え付けようとする行為。
放送エリアの民度を低める作用を及ぼす行為。

その他、いろいろとあると思いますが、日本の新聞やTVを主な情報取得のツールにしている人には、この実態はなかなか分かりにくいことと思います。
働き盛りの人は、時間がなく、新聞を読む時間もなかなか取れない方が多いと思います。そうした状況を逆手に取るような、新聞やTV局等の大手マスコミの報道姿勢には、極めてアンフェアな行為と思えるものを感じます。
時間に追われている人にとって、TVから流れるニュースキャスターの、あるニュアンスを伴う発言は、大きな影響を与えます。

個人がしっかりしないから騙される。所詮その程度の民度。こう批判するのは簡単ですが、社会がこうした流れで廻っているのであれば、多忙なビジネスマンでも、正当な判断ができるよう噛み砕いて情報を流すべきと思います。百歩譲って、隠蔽しようとするのは止めて欲しいと思います。


これに類することで、WiLLの12月号に興味深い記事がありました。