公共投資から地方分権を見ると(2)

公共投資に関わるダーティーさは、公共投資という施策がダーティーなわけでなく、それに関わろうとするダーティーな政治家により、ダーティーなイメージがマトワリつくためです。

それでは、公共投資がどんな内容でも良いかと言えば、そんなことはありませんよね。
公共投資には、やるべき公共投資と、必要性の薄い公共投資があります。
また、それらにピッタリとオーバーラップするわけではありませんが、後々までの経済発展につながる公共投資と、そのときだけ景気が良くなったように見えても、やがて失速する公共投資とも言い換えられると思います。

公共投資による景気のテコ入れを行おうとすると、公共投資は一時的な効果があるだけで、結局無駄な工事を行うだけで景気浮揚の効果はないという政治家や経済学者が必ず出てきます。
これは、上記のような分類を行わず、公共投資を何でも同じことと考えているためか、また、財政再建を重視する観点から、公共投資を抑えたいという経済政策を信奉しているためかの理由によるものと思います。
前者は、銀行家が融資を必要としている人の事業を、将来的に伸びると思えるものか、それとも事業性がないと判断するのか、その事業の内容と経営者の熱意・資質で判断できないのと似ています。

自民党の長期政権下で、経済が沈滞している時に、公共投資に巨額な資金を投入しても、思ったほどの景気対策にならなかった経験が、トラウマのようになっている場合もあります。
その公共投資を行わなかった場合に、どのような景気状況にになっただろうかということが分かりませんので、比較が出来にくいということもあります。
公共投資を行っても実感できるほど景気が良くなかったけれど、行わなかったら、よりひどい景気の落ち込みが生じたかもしれません。しかし、それは、証明できませんので、積極的に公共投資を行っても実感できるほどの景気浮揚が感じられなかっただけに、公共投資を批判する側に共感が集まりやすいということもあるでしょう。


そのため、後々の経済活動にインパクトを与える公共投資となるものと、一過性で終わってしまうものとを、計画段階で峻別して判断することがとても重要になります。


具体的な事例として、
例えば、私の住んでいる静岡市周辺で、不要な公共投資と呼べるものがあるだろうかと考えてみます。

静岡市では、必要のないところに立派な道路が造られてきたということは自分が目にする限りは無いと思います。道路以外に橋やダムや港湾施設においても同様に思います。むしろ、事業が需要の後追いで、予算に余裕がないのを感じます。
また、最近では、従前計画されていた、道路の拡幅を行う予定だった都市計画道路の見直しなども行っているようです。静岡市をはじめ県内の大部分の地域では、今後人口増が見込めませんので、従前そのような場所で交通量の増大を想定していた道路の拡幅計画を、今後実行しても無駄な投資になるのではないかと言う判断を、静岡市はしているものと思います。これは、行政が非常に冷静で客観的なものの見方をしていると評価できます。

車のあまり通らない道路を立派に改良したり、一般道路が広く立派で車がスムーズに流れているのに、その一般道路と並行して有料道路を作ったりしている例などをもって、公共投資華やかりし頃、道路族と呼ばれる族議員が批判されたりしました。

しかし、静岡市周辺では、そのようなことはないと思います。
大臣経験者の自宅の脇が、高速入口になった事例などはありますが、どのみち近くに入口は造らざるを得なかったわけですので、その程度でとどまるものでしたら、ご愛嬌と呼べるレベルのものと思います。ちなみにこの予算は市の予算ではありません。

道路を造れば、その後のメンテナンスや改修工事、中期には変更工事等で継続的に税金をつぎ込まなければなりませんが、その道路が整備されなければ、物資の流通や人の移動にも支障をきたし、経済活動は滞ることになります。
必要な場所に、道路や橋などを造ることは、経済活動を支える重要な施設と言えます。波及的な経済効果が見込めます。

不要なインフラを整備して、その維持管理に毎年税金をつぎ込まなければならないといった、無駄使いと呼ばれるものはありませんので、静岡市は常識的な経済観念が働いており、バランスが取れている自治体ではないかと思っています、、、、、とっとっとっと、、ありました、空港です。


静岡市ではありませんが、大いなる無駄などと陰口をたたかれながらも、誰も止められずに進んでしまった、富士山静岡空港!これは主には県と国交省の事業でしたね。総事業費は約1,900億円、そのうち空港本体の事業費は約490億円という事業でした。

無駄な公共事業の代表例として、TVタックルでも叩かれていました。絶対つぶれるなどとも言われました。つぶしてやると言っていた著名な政治家もいました。TVではつぶれると言われながら、空港の造成を行っている映像が流れていました。

そんなこと言われても、もうとっくに出来上がっています。
路線廃止などもありながら、現在も稼働しています。

絶対つぶれるなどと文句を言うなら、工事許可が下りる前に、論を尽くして事業を中止させて欲しかったと思いながら、私はTVを見ていました。
需要予測の数字が甘かったというか、まやかしだったのではないかなどと、自分も思う所があります。しかし、造ってしまっただけに、地元民としては、もう少し猶予期間をもって判断頂きたいとも思うのです。
もっとも、この猶予期間が、地元に大きなツケとなる場合があるのが、需要予測の甘い公共投資の怖いところです。
需要予測の甘さから採算ベースにのらない事業は、需要がそれだけないということ、必要とする人が少ないということです。

静岡空港の2011年度の収支は、建物や備品など整備の減価償却を考慮した企業会計の手法で算出したところ、過去最大の16億9746万円の赤字だったそうです。同空港の赤字は2009年6月の開港以来3年連続です。
企業会計に準じた空港の収支報告は、国が2009年度から透明性を高める目的で公表を始め、地方空港でも同様に試算するよう国からの求めに応じて県で毎年発表しているものです)

「収益の大半を占める着陸料は9325万円で、前年度(1億9177万円)の半分以下に落ち込んだ。11年度に就航便数の拡大を目指して国内線の着陸料を半額に引き下げたことのほか、小松便と熊本便の運休や東日本大震災の影響に伴う国際線の減便により、着陸回数が前年度比25%減の1日平均9・6回となったことが響いた。一方、施設の維持管理費や人件費などの支出は、19億1999万円に上った。」としています。

厳しい数字ですね。
いくら努力しても、採算にのらない事業なのでしょうか。
それを判断するには、当初計画段階で建てた需要予測の根拠・数字を、現実の数字と対比して対策を考える必要があります。

Plan(計画):従来の実績や将来の予測などをもとにして業務計画を作成する
Do(実施・実行):計画に沿って業務を行う
Check(点検・評価):業務の実施が計画に沿っているかどうかを確認する
Act(処置・改善):実施が計画に沿っていない部分を調べて処置をする

PDCAは事業の基本中の基本だと思いますが、案外、県や国が関わった事業は、その後の、CAが十分ではないように思います。