市場経済と制御キー

先日は、供給能力に余裕がある場合、ハイパーインフレが起こる可能性があるのは、地域紛争が生じた結果、日本に原油が入らなくなった時と、世界の人口が爆発的に増えて食糧危機が生じた時と記しました。

しかし、このどちらも、外交政策によってある程度のリスクをカバーすることが可能です。

複線的に産油国とのパイプを緊密にして、ODA等、技術支援や民間投資により友好関係を築いていくことで、原油の輸入ルートを幾つも確保しておければ良いのですが、

今後、どの政党が政権をとるにしても、原発の比率は低くなるのは避けられないと思います。その場合、中東をはじめとする産油国での紛争の際の対応を真剣に考えておかないと、大変なことになります。

危機が生じた際に、同盟国アメリカとの関連で、日本もイスラエル支持国とみなされる恐れが高いですので、アメリカとの付き合い方と、中東・ロシア・メキシコ・ベネズエラ等の産油国などとの付き合い方、地域紛争が生じた際にどのように平和解決を図るために貢献するか等について、普段から行動を伴った対応をする必要があります。

今は昔の話になりますが、スタグフレーションを招いたオイルショックが起きた1970年代の時の政府も、産油国との付き合い方には気を使っていたように見えましたが、最近の政府にはエネルギー源の確保に対しての危機意識があまり感じられないような気がします。(この時でも消費者物価指数は23%の上昇で、ハイパーインフレとはほど遠いものではありました)

福島第一原発の事故以来、代替エネルギー論は熱く交わされますが、既存エネルギーの補給線への懸念はあまり議論になることはないように思います。優秀な官僚が抜かりなく対応してくれているのかもしれませんが。
日本が太平洋戦争へと向けたペダルを踏み込み加速させた原因の一つは、アメリカが日本への石油の供給を絶ったからだともいえます。アメリカは、弱い日本が強いアメリカに喧嘩を売らざるを得ないようにもって行き、公明正大に日本を袋叩きにしたようなものでしょう。

エネルギーの確保は日本にとっての生命線ですので、いつの時代も最重要課題の一つと言えるでしょう。
原発から脱却するのは良いのですが、日本企業の国際競争力を保ち、景気を落ち込ませずに代替エネルギーで日本の社会を廻していくことができるようになるまで、どうやってエネルギーを確保していくかが問題なのですが、とにかく今や国民の嫌われ者の原発とサヨナラする政策を打ち出せば、国民受けするだろうと考えて、政権公約に取って付けたように書くのですが、それ以上のことは考えていそうにないように見えてしまいます。


さて、世界の人口は地域的に漸増していても、それが一時曲線のように続くわけではなく、カタストロフィー理論のように、ある時に爆発するように増えるといいます。
そのときの食糧不足の危機は以前から警鐘がならされていますが、その時に備えて、日本はどういう準備をしていかなければならないのでしょうか。

TPPの議論に関しては、こうしたリスク管理の視点が抜け落ちているように思います。社会で泥臭く働いている私達には、一見批判される余地のないように見える、市場経済に総て任せれば効率よくうまく進むという思考。しかし、私はこの思考に危険性を感じます。
原油の価格支配力は、メジャーからOPECや新興産油国に移ったり、供給する力を持った国々が持っています。
世界の資源は世界のものではありません。

食料についても日本が生産国にならない限り、価格をコントロールはおろか食糧危機を乗り越えることもできないでしょう。
TPPの問題を紐解くには、エネルギー問題、国防問題の概念が必要に思います。市場経済理論だけで論じるべきものではないと思います。


TPPについて、アメリカでの国民目線でも問題ありとしている意見は、私達も冷静に把握する必要があります。


「これは貿易協定ではない、企業による世界支配の道具です」
「1%の富裕層が私たちの生存権を破壊する道具です」

こうした見方は、とかく市場経済最優先の感があるわが国にあって、とても新鮮に見えます。


http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=WFY-z1PcjT8