訃報に接して(�)

勇敢なアメリカ軍人として、また、下院、上院議員としての活動で、アメリカの国益を守り、多くのアメリカ人の尊敬と賞賛を集めた、ダニエル・イノウエ氏が亡くなりました。

日米貿易摩擦では、日本の市場の閉鎖性を非難する強硬な姿勢を見せ、アメリカ国家を背負って政治家として活動をされてきました。


イノウエ氏はアメリカ陸軍の日系人部隊である第442連隊戦闘団に配属になり、イタリアでドイツ国防軍と戦い、その戦禍で右腕を失いました。壮絶な戦いだったようです。
日系人アメリカ兵としての出兵は、アメリカ国民からテステイングの目戦で観察される面もあったと思います。志願した日系兵士は相当なプレッシャーがあったことでしょう。
しかし、日系人部隊である、この第442連隊は凄まじい戦闘を戦い抜きました。
敵が投擲した手榴弾の上に体を覆い被せ、自分を犠牲にして仲間を助けた兵士など、その戦闘の様子を知ると身震いします。

右腕を失ったイノウエ氏他、多くの部隊員は数々の勲章を授与され帰国しました。

開戦ともにアメリカ在住の日系人は強制的に捕虜収用所に連行されました。
日系人達は星条旗に忠誠を誓ったのに・・・
アメリカ国民として生きていくことを宣誓したのに・・・

アメリカンとして精一杯生きてきたのに、アメリカは彼らを疑ったのです。
故国の日本との精神的絆は簡単には断ち切れないと思います。
しかし、それまで、アメリカ国民として、アメリカに溶け込もうとして一生懸命に生活してきたことと思います。
それなのに、アメリカ国民としての尊厳と誇りとをズタズタにされたのです。

そんな日系人達にとって、イノウエ氏他日系人の部隊である、第442連隊の活躍は誇らしく嬉しかったことでしょう。

彼らを誇りに思い賞賛したのは日系アメリカ人社会だけではありませんでした。アメリカ陸軍も彼らを英雄として賞賛しました。

彼らの命を賭けた戦いにより、アメリカは日系人達をアメリカ国民として改めて迎えることになった筈・・・

しかし勲章を得て帰国したイノウエ氏は、カリフォルニアの理髪店で日本人の血が流れているということでサービスを断られました。
アメリカを敵にした黄色い肌の日本人の血を引く日系アメリカ人は、それでも米国社会から偏見をもった扱いを受けたのです。


さて、イノウエ氏は日米貿易摩擦では、徹底的に日本の社会の閉鎖性を批判しました。これをもってイノウエ氏を親日家でない日系人と捉える人もいたようですが、ここは私達の思考パターンを修正する必要があると思います。

イノウエ氏はアメリカ国籍をもったアメリカ人です。日本の同盟国と壮絶な戦いを行いました。
アメリカ国民のイノウエ氏が守るべきはアメリカの国益です。日本の立場を重んじれば、アメリカの国益が損なわれます。日本に市場開放を迫るのは当然のことです。アメリカの国益を損ない日本を利することを主張するアメリカ人がいるとしたら、日本のスパイとみなされるでしょう。

しかし、日米での深刻な対立軸が薄れると、イノウエ氏は日本の立場に配慮したものの言い方をするようになります。
アメリカの国益を損なうことがなければ、日本との友好を損なわないよう、日本との関係を深めるために行動されました。
ご両親の故国日本への複雑な思いを偲ばせますが、イノウエ氏は真の意味での国際人のありようを示してくれています。


日本の国土は日本だけのものではないなどと公言した総理が民主党にいました。
竹島尖閣諸島や沖縄までも、奪おうとする国に分けてやろうとするかのようでした。日本人である前に、地球市民であることを重視することが国際人であるかのような思考をしている人達です。

この人達が行うべきことは、韓国や中国を利するために、日本の国益を損なうのではなく、日本の国籍を捨てて日本を離れることでしょう。
いかに民団等から資金を得て、また選挙支援を受けて当選したとしても、民団等を利するための法案をこそこそと成立させようとするのは、国際人ではなく、単に私利私欲をきれいごとで味付けしてゴマカシただけではないでしょうか。
イノウエ氏とは腹の据わり方が違います。

アメリカ社会に溶け込み、アメリカ国民として立派に生き抜き、アメリカでのオピニオンリーダーとして活躍されたイノウエ氏。
日本人の魂も引き継いでアメリカで生き抜いた方だと思います。

ご冥福をお祈りいたします。