中国撤退の課金

昨年中国で発生した反日暴動の後、個別の日系企業が撤退を考えているかどうかについての報道を目にする機会があります。
ユニクロの柳井社長の談話記事等、いくつか目にしてみましたが、私の見たのは、どれも中国からの撤退はあり得ないというものでした。
進出企業は、中国共産党一党独裁による多岐に渡るカントリーリスクは周知の筈でしょうから、何を今更という気がしますが、それこそ今更ながらの一大決心のような力の入ったコメントのように感じました。

暴動が収まって間もなくの昨年10月に、NHKのクローズアップ現代で、中国に進出している日系企業の経済補償金のことが取り上げられていました。

私はこの時まで、中国に進出した日系企業に、このような縛りがあるとは知りませんでした。
日系企業が中国から撤退しようとする場合、
中国からの撤退企業は、従業員に経済補償金を支払わなければいけないということだそうです。
退職金に近いもののようですが、退職金は雇用者被雇用者との労働契約、労使協定といった位置づけのものですが、この経済補償金は中国政府が関与しており、手続きには地方政府の許可も必要で、撤退意向企業の帳簿等の調査が終わるまで撤退が認められないために、長い手続き期間が必要といいます。法的に裏付けのある義務のようです。

クローズアップ現代では、夜逃げ同然に撤退したという電機部品の製造会社の社長に話を聞いていました。
件の会社は経営難で工場を閉めることにしたところ、退職金が全額支払われないことに反発した従業員が、社長をホテルで20日間も軟禁状態にしたそうです。社長は隙を見て逃げ出したそうですが、社長の長期不在により日本の本社も潰れたとのこと。


実際どのような仕組みになっているのかは、個別企業と中国政府等との進出時の条件によって異なるでしょうが、この補償金は従前より引き上げられてきているとも聞きます。
また、個別企業が黙っていれば、その詳しい縛りの内容が表立ってきませんので、推測交じりの感想でしかありませんが、、

中国の賄賂政治は半端ではないですので、日系大手企業の進出により、共産党上層部に日系企業が会計処理しにくい多額のお金が渡っていると考えるのが自然に思います。
日系企業が進出してくるにあたり、出店等の便宜を図るためという名目で賄賂を収受しているのではないでしょうか。土地が国有でしたら、出店地に関しても政府の手を煩わせることになりますので、管轄部署の政治家・役人は潤うことでしょう。
合弁企業を設立して、日本から進出してきた企業の技術を盗む、否、学び取り、中国国内企業で、その企業の製品を製造できるようになれば、日系企業は必要ありません。
法律は自在に変えてきますので、最低賃金を上げたり、また、官製で暴動を生じさせることも可能です。日系企業がメリットがないので撤退しようとすれば、莫大な経済補償金をむしりとろうとします。


しかし、この経済補償金は日系企業のみで、欧米企業にはないらしいのです。当然ですよね。
欧米に進出している中華系企業には、欧米はそのような条件を課すことはないでしょう。WTO加盟国は、相互主義を原則にする筈ですから、欧米から中国に進出する企業に、そのような経済補償金条件を課す動きがあれば、ふざけるな、という話になるでしょう。それならば、欧米進出の中華系企業にも、同じ条件を課したり、中国なんぞでは商売はしないという、ことになるでしょう。
中国もWTOに加盟していますので、同じ加盟国に相互主義でない経済補償金など提案する方が非常識と言えます。

ところが、都合の良いときには、グローバルスタンダードを標榜する日本の経済界は、このような不平等条約ともいえる不利益な条件に甘んじて、中国で金儲けをしてきたということです。

昨年の反日暴動の被害額を、日系企業は極めて低い金額で見積もっているというのが実際の保険業界の見方のようです。しかも、経団連さえも被害を過小評価しようとして、中国の顔色を窺っているようなのです。

マスコミが中国の顔色を窺って、反日暴動の原因は日本が作ったものなので、日系企業が被害を受けたのは日本政府のせいだという、倒錯した論理で中国共産党に媚を売るのは、今に始まったことではありませんが、経済界の旗振り役でもあり、利害調整を率先して行うべき経団連が、そんな体たらくらしいのです。

過去の経団連会長が日本政府を飛ばして中国共産党と秘密交渉をしたり、また、民主党政権により任命された、中国共産党と長く蜜月状態だった企業の会長だった大使は、日本の国益は二の次で、中国の国益と出身企業の利益を優先するよう動いたとされますが、金儲けと国益を天秤にかけるようなさもしい姿勢が、今の日本の大企業には見られるようです。

政府・官僚が経済界をバックアップする力が弱いということはあるでしょうが、カントリーリスクの高い、危ない国には、経済界は日本政府を利用して(力を借りて)、最悪でも相互主義にて条件を整備しなければならないでしょう。

長くODAを行ってきている中国で、今やアメリカに次ぐ経済大国に、この不平等条約に対して何も言えないというのは、自分達も何らかの利権を得ていると勘ぐられても不思議ではありません。
表にできない数千億円の赤字が、中国を撤退することで露顕すれば、会社そのものが倒産してしまうなどという大手企業の存在も喧伝されています。
今更襟を正せないので、中国共産党と心中するしかないなどと考えているようでしたら、情けない話です。