中国人民の感覚の変位

今日は、年始回りに、清水在住のK氏を訪ねました。
上海出身のK氏は、年末に中国から正月用品を持って日本に戻り、日本で新年を迎えたとのこと。

玄関先で、ご挨拶だけのつもりでしたが、見せたいものがあるということでしたので、お邪魔することにしました。
K氏夫妻は、正月用品という木の実やお菓子を出してくれました。

旧正月以外にも、新正月を祝うのですか?との私の問いに、

奥様が、新正月は1日だけです。そのため、前後の土日休みの分(休日の権利)を1月1日の前後に持って来て、3連休にするのです。その代わり、休日の権利を1月1日前後の日に持ってきた土日は、休日でなく働くのですよ、と教えてくれました。

K氏は茶道具をテーブルに置いて、プーアール茶を入れてくれました。
茶道具や、その上で茶碗をゆすいだりする風習を初めて見ました。

生茶と呼んでいる、あまり焙煎していないような茶葉と、十分焙煎した茶葉との2種類のプーアール茶を飲み比べてみました。
K氏は生茶が好きだそうです。

生茶は薄い色ですが、香りはしっかりしていました。
プーアール茶は、1度目よりも2度目に淹れた方が色も濃く味も濃いのですが、2度目に淹れた生茶は色は濃く見えませんでしたが、香りは微妙に変化していました。


さて、K氏は昨年11月に中国共産党の指導者が変わったことで、中国は大きく変わるよと若干興奮気味でした。

暫らくは習近平江沢民派に頭を抑えられるだろうというのが、大方の予想と思っていましたので、私は、どう変わるのですかと訊ねました。


K氏は、習近平李克強は人民の考えに近いので、今回の指導者の交替で、人民にとって良い社会になると皆が期待していたと言います。ところが、、

中国は新聞を出版する前に、内容を中国共産党が検閲して、おかしな箇所は修正したものを出すそうです。(新聞でなく旧聞になってしまいそうですが)

改革派新聞社の「南方周末」新年の社説に、2013年の夢として記載された文章が、習近平指導者に変わったことで、2013年は、いろいろなことがうまくいくという論調の記事が載ったそうです。
ところが、これは新聞社の記載内容ではなく、共産党に検閲され、文章も大きく変えられたもの。
実際は、民主化言論の自由を求める内容だったそうです。そのため、新聞社は抗議のストライキを行ったということです。

また、改革派の雑誌「炎黄春秋」(中国のことを炎黄とも表現するそうです)は、やはり、新春の記事が原因で、ホームページが閉鎖されたそうです。


この二つの事件が、中国では今波紋を呼んでいるというのです。
人民は、習体制で社会が変わるのではないかと期待していたのに、これでは今までと変わらないではないかと思い始め、がっかりしている、とK氏。

状況はK氏の説明で把握できましたが、これでは、K氏の最初の言の様に、中国は大きく変わることにはならない筈です。

江沢民派が中央政治局常務委員会を抑えていますが、江沢民派の常務委員は年齢が高いため、5年後には皆辞めなければならないので、5年後には胡錦濤が望んでいた、習・李体制で改革に腕を振るえるようになるのではないですか。5年後には人民の望むような社会を実現できるのではないですか、と私。

すると、K氏は、
今の人民は、何故5年後なんだという不満を口にしています。
5年というのは中国共産党の事情です。
私達がなぜその5年を我慢しなければならないのか、という論理なのです。


ああ、そういうことか、私はやっと納得しました。
私は、K氏の言う、何が変わろうとしているのか当初は理解できませんでしたが、こういう感覚を人民が持ち出して来ているということなのです。

それでは、変わる可能性、本当に波瀾が起こる可能性もあるかもしれないと思いました。
しかし、国境は力によって決まると考えている中国です。
天安門の悲劇が再来しないことを願います。



後から調べた記事を転載します。

経済が豊かになれば、言論等の自由を制限されても大人しくしているというのが、暗黙のルールのように見えましたが、、

南方周末の記事は、ちょっと長いですが、NHKが分りやすくまとめています

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中国紙記事書き換え 抗議活動
1月7日 19時13分

中国で新聞に掲載される予定だった、政治の民主化などを求める記事が、地元当局によって書き換えられたとして、この新聞の記者らが強く反発している問題で、広東省にある本社の前などで7日、抗議活動が行われ、習近平氏が最高指導者に就任してまもない今の時期に、この問題をきっかけに国内で動揺が広がることを当局は強く警戒しているものとみられます。

中国では、南部・広東省に拠点を置く新聞「南方週末」が、今月3日付けの新年号で、政治の民主化言論の自由などを求める記事の掲載を予定していたところ、地元当局の指示で、記事の内容を大幅に書き換えられたとして、この新聞の記者らが反発する声明を発表するなど波紋が広がっています。広州市にある「南方週末」の本社前では、7日、記者たちを支援するなどとして300人を超える人たちが集まり、「言論の自由が葬られた」として、菊の花を手向けるパフォーマンスで抗議の意思を示していました。
周辺には30人以上の警察官などが出て警戒に当たり、菊の花を撤去して、参加者の一部と言い争いになる場面もありました。
抗議に訪れた大学生の男性は「真相に迫る報道が好きで、新年の特別記事には特に期待していました。政府の、圧力への不満を表明したいと思って来ました」と話していました。
抗議活動は、北京にある「南方週末」の支社の前でも行われ、10数人の人たちがプラカードなどを持って集まりました。
この問題を巡っては、中国のインターネット上でも、記者を応援したり、言論の自由を求めたりする声が相次いで書き込まれていますが、ほとんどがすぐに削除されています。
中国共産党系の新聞は、7日付けの紙面で、関係者に対して冷静になるよう呼びかける異例の社説を掲載しており、習近平氏が最高指導者に就任してまもない今の時期に、この問題をきっかけに国内で動揺が広がることを、当局は強く警戒しているものとみられます。
「南方週末」とは
「南方週末」は、中国南部、広東省に拠点を置くメディアグループが毎週1回発行し、中国各地で販売されています。
官僚の汚職や社会の不正などについての独自取材で定評があり、都市部の若年層を中心に人気を集めています。
南方週末のホームページによりますと、近年、発行部数は年15%のペースで増え続け、現在は170万部を超えているということです。
中国国内で最も影響力のある新聞の1つとされ、2009年にオバマ大統領が中国を訪れた際には、アメリカ側が南方週末を選んで単独インタビューに応じています。
中国言論の自由
中国では、言論の自由について、憲法の第35条で、「国民は、言論と出版の自由がある」と規定されています。
しかし、実際は、共産党の中央宣伝部が、国内メディアの伝え方を厳しく管理しています。
共産党中央宣伝部は、党や政府にとって好ましくない情報については、各メディアに対して、独自の取材をしないよう指示したり、新聞の発行停止の措置を取ったりすることがあります。
2006年には、共産党系の新聞が発行する「氷点週刊」が、国内の歴史教科書を批判する大学教授の論文を掲載したことで、中央宣伝部から一時、発行停止の処分を受け、編集長が解任されました。
この論文は、中学生の教科書について、清朝末期の義和団事件を例に挙げて、義和団を当時の帝国主義諸国に対する民族の抵抗運動とだけ位置づけるのではなく、略奪や虐殺にも関与した側面も指摘すべきだなどとして、当時、共産党が推し進めていた歴史教育を、客観的に見つめる必要があると主張しました。
一方、おととし7月、中国東部の浙江省で、高速鉄道どうしが衝突し、40人が死亡した事故では、中央宣伝部が事故に関する独自の記事を禁止する通達を出したにもかかわらず、政府の対応を痛烈に批判する報道が出たほか、紙面に掲載されなかった記事を、インターネット上に投稿する記者もおり、メディアと当局との間のせめぎ合いが目立つようになっています。
北京でも記者支持の動き
北京にある「南方週末」の支社にも、7日、記者たちに支持を表すため、花束やプラカードを手にした人たちが次々と駆けつけました。
30代の男性弁護士は「報道は政府に牛耳られてはならないし、市民には真実を知る自由があるということを、より多くの人々が知る機会だと思う。
当局は反省し、永遠に自分たちの思い通りになるわけではないことを知るべきだ」と話していました。
また、コラムニストの男性は「当局が直接、手を下して私たちの新聞を書き換えることはがまんならないし、物書きなら誰しも耐えられないことだ。
私は『南方週末』を支持しているし、もっと自由に中国を報道してほしい」と話していました

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炎黄春秋に関しては、YOMIURI ONLINEに該当の記事がありました。

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 【北京=牧野田亨】改革志向の論調で知られる中国誌「炎黄春秋」関係者は4日、ホームページが中国政府当局によって閉鎖されたことを明らかにした。


 別の中国誌によると、登録手続きの不備が理由という。しかし、炎黄春秋は1月号の巻頭で「中国憲法は政治体制改革の共通認識」とする論文を発表。〈1〉全国人民代表大会(国会)は最高の国家権力機関で、国家主席や首相ら指導者の罷免が可能〈2〉私有財産の保護〈3〉言論・出版の自由――など憲法の規定を挙げ、「これらを実行するだけで政治体制改革は大きく前進するだろう」と訴えており、この論文が原因となった可能性がある。

 改革派の学者ら71人も12月、同じ趣旨の提案書をネットで公表したが、一部は当局に削除された。

(2013年1月4日18時13分 読売新聞)

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