TVとネットの狭間

何年か前まで、各TV局は放映コンテンツの充実と数を揃えないと、チャンネル数の増加に対応できないと、必死になっていたように見えました。
今では、そんな時もあったかなと思えるほどの弛緩した空気が放映番組から漂っているのを感じます。
特にBSなどは通販番組や、いまだに安上がりの韓国ドラマの比重が高く、とりあえず放映時間を埋めることさえできれば良いと考えているように見えます。これは地上波放送についても同様に感じることです。

多チャンネル化になれば、番組自体の差別化を明確にする方向に進むのかと思いましたが、何だか投げやりな番組制作姿勢に思えます。
番組の省力化を図り、結果的に安く上げるためにか、事前打合せを行わなくても番組の進行を取り仕切れるタレントが重宝がられているように見えますが、所詮綿密な打ち合わせを行わなくて放映する番組ですので、底の浅さが視聴者に見透かされ、特に若者にソッポを向かれやすい傾向にあると思います。

また、TVの視聴よりも、ネットに費やす時間が多くなっているのは若い世代ばかりではないと思います。
定量的な裏付けを押さえている訳ではありませんが、TVの放映するコンテンツのレベルと、ネットへ費やす時間の増加とは相関関係があると思え、今後もマスコミが現状のような状況であれば、視聴者の絶対数は減少傾向になると思います。
TVの視聴率は相対的数字ですが、同じ視聴率でも実際に視ている人の実数は減少傾向となり、スポンサーはCM放映しても、CM反響による購買数の伸びが停滞していくという流れが、今後顕著になるのではないかと思います。

ただ、CMにより購買へと誘導される層は、D社等の言うB層の割合が高く、もともとTV視聴の傾向値の高い方達ですので、スポンサー達の現状の危機意識は、まだ崖っぷちというところまではいっていないのでしょう。

しかし、数年前から、特に富裕層の中には既存のメデイアから情報を取得しない人達がでてきているため、マーケティングの世界では、富裕層を取り込むための特別の手法が研究され、各種セミナーなどでも共感を呼び、多くの企業がそうした手法を参考にして取り組み出しています。

マスメデイアの世界は、ネットの存在自体はまだまだマイナーなものと捉えているようですが、ネット通販の伸びも堅調ですし、その実数は無視できない数字です。音楽の世界でも、CD売上の減少を嘆く声を良く聞きますが、有償・無償はともかくダウンロード数は膨大な数字です。形態が変わっているだけで、音楽を楽しむ人の需要が減っている訳ではないでしょう。

もっとも、私はいくらダウンロードの方が安いといっても、CDを購入したいのですが、最近はCDを販売している店を探すのに苦労します。
私の住む駿河区では、数年前には数多く揃えている店舗が何店かありましたが、閉鎖した店、売り場を総てゲームソフトに変えた店や、置いてあっても売り場面積が極端に少なくなったりと、寂しい限りです。
セントラルスクエアの2階に健闘しているお店がありますが、店舗面積・棚の容量の制限で、欲しいものがない場合が多いのです。
ホモサピエンス・オヤジ族種からしますと、ロングテールの法則ではないですが、膨大な在庫が持てるネットの世界とは太刀打ちしようがないのだろうとは頭で判っても、現実を目にすると何か寂しい感じがします。
(多チャンネル化は、ロングテールの法則にそった、多種多様な需要を拾うことになる筈ですが、いかんせん、ネット店舗の、金利も余分なコストもかからない膨大な在庫と違って、リアルな放送の多チャンネル化は即コストアップとなりやすいため、マスコミを取り巻く構造から変えていかないと成り立たなくなるように思います)

いずれにしても、多種多様な需要に対応できるネット販売は、ますます形を変貌させながら、身近な存在になっていくことでしょう。


ネットに親しむ人、ネットに費やす時間が増えてきている状況等を鑑みて、TVメーカーも新商品の中にネットとの連結をスムーズにできる機種などを出してきています。しかし、これは自分達の首を絞めることになるようにも思えます。
ひと頃は居間の中心に大型TVが鎮座するというのが、一般的家庭のパターンだったと思います。
それが、ネットへアクセスする人が増加すると、ネットは複数人で視聴するよりも、個々人の嗜好によって楽しむ性格が強いので、対戦ゲームなどを楽しむのでなければ、特に若者は自分の部屋で、PCやらスマホやらでネットを楽しむ場合が多くなるでしょう。
居間のTVは親世代、お年寄り世代のおもりとなりつつあるというパターンになると思います。

TVメーカーの機能追加により、TVがネットの媒体として便利な存在になれば、ネットと縁遠かった中・高・老年世代の、ネットへのアクセスも次第に増えてくるでしょう。
その場合、ちょっと使いこなす人であれば、日本のTVのコンテンツが、世界のTV局のそれと比べると随分バランスを欠いているのではないかということにも気付くことになるでしょう。