議論の基準

議論の基準をはっきりさせないと、労力の割りに、何の問題解決にもならずに、お互いに不満が残る場合があります。

麻生副総理・財務相が地方公務員の給与削減を要請したことが、波紋を呼んでいます。自民党の内部にも反発が出ているようです。


政府と全国知事会など地方6団体の代表による「国と地方の協議の場」が15日、政権交代後初めて首相官邸で開かれた際に、2013年度の地方公務員給与について、麻生副総理・財務相が国家公務員と同様に7・8%削減することを地方側に要請した。  (2013年1月16日07時56分 YOMIURI ONLINE)


地方側は「国を上回る行政改革を既に行っていることを評価してほしい」と反論し、議論は平行線に終わった。

政府は国家公務員の給与を12年4月から2年間、東日本大震災の復興財源に充当するため、平均7・8%削減しています。
地方公務員の給与を国と同様に7・8%削減した場合、削減額は国と地方合計で約1・2兆円に上るそうです。


自民党は昨年の衆院選政権公約で、国と地方合わせた公務員総人件費の2兆円削減を掲げていました。

政権公約で掲げられていたといっても、いきなり地方公務員の給与削減を要請されて、該当される公務員の方々も当惑していることでしょう。

最初のアナウンスとして、アナウンス効果を大きくするための第一声として、反響を考えてのことなのかもしれませんが、具体的に実現するための計画は詳細に順序だてる必要があります。
それを順序立てて、実行できるようにアクションプログラムを組み立てるためには官僚のバックアップがなければなりませんが、ここを緻密に行わないと、自民党の反対派や地方自治体の反発が大きくなり、政権運営の足枷となる恐れがあります。

周囲の官僚の不作為で(型通りのことは行うでしょうが)、この問題に曖昧な決着の付け方をするかもしれません。
それは国家公務員達にも、こと給与の件は外部から細かく入り込んで欲しくない範疇のことで、保身が働くからではないでしょうか。

不思議なことですが、公務員の給与は、基本給等は、市民の目にも触れることがありますが、支給総額について、具体的な項目を網羅した明細を目にすることはないように思いますし、それをガラス張りにするような主張もあまり聞きません。

ディーラーの担当によるかもしれませんが、地方でも高級外車を購入する割合は、公務員の方が案外多いなどと聞いたことがあり、恐らく給与等は高いのだろうなとは思います。(地方の名士の子息をコネで採っている自治体も中にはあるかもしれませんが)

また、給与の他に手当てが自治体によって様々な種類があるようです。

基本給とは別の、手当てが自治体によって様々な名目で、数多く支給されているという話を聞きますが、実態はどうなのでしょうか。

例えば、5%の給与削減をするという場合は、総支給額=〔基本給〕+Σ〔手当て〕
のうち、5%×〔基本給〕が削減額になるのでしょうね。

〔手当て〕の種類は、残業手当、家族手当、住宅手当、職域手当て、食事手当て、出張手当(出張しないのに手当として支給されている自治体などが問題になったことがありましたが、その後見直しはしたのでしょうか、見直してもそのままなのでしょうか)、・・・等々


民間人の頭では考えにくい手当て、笑ってしまうようなものも、自治体によっては、他にもいろいろあるようです。その他、いろいろな補助もあるようです。

こうした手当て類は、削減の対象外となるのでしょうから、実態は本当に分りにくいところがあります。


ある組織の給与が羨ましければ、その組織に入れば良い、その給与をもらえる組織に入れない者が、外から文句を言うのは筋違いだといった、批判も寄せ付けない愚者の理論を引き合いに出す方がよくいますが、

民間と違い、公務員給与は、国民、市民等から強制的に税金を徴収して、それを配分するものですから、国民、市民にはある程度ガラス張りにする必要があると思います。
その組織で独自の能力給体系や評価基準を設けることは必要でしょうが、総支給額のガイドラインとなる給与体系は自治体別に明確にし、自治体の特殊性を考慮して給与体系に反映させることが必要に思います。
せっかく知事会等では前向きな議論を行っているようですが、人事体系の議論も行う必要があると思います。


自治体により、地域特性もあり、冷暖房費等光熱費の違い、物価の違い、公共交通機関の敷設の違い、家々の雪かきが必要な地域では手当てだったり、休みを取れるようにしたり、等々、各地域の事情をウエイト付けして公務員給与のガイドラインを決める必要があると思います。
地域特性による手当てを反映することで、全国の地方公務員の給与体系を一元化に近い形にすることが可能と思います。職能給を体系化することで、国家公務員給与との関連付けもできそうに思いますが、

こうした基準を、国家公務員、地方公務員等、またその他の独立行政法人等々で、明確にした上で、給与の上げ下げを議論していかないことには、公務員の方々もその他の国民・市民も、何か割り切れない気持ちで5%などという数字を無味乾燥なものと受け止めるだけになってしまいかねません。

一生懸命良い仕事をやってくれれば、公務員の給与が民間のそれよりも水準が高くても悪いことではないと思いますが、給与体系をブラックボックスにすべきではないと思います。
例えば、一部上場の大手企業よりも静岡市役所に入るのは難しいそうですので、給与の面でも大手企業を上回らなければ優秀な若い人が入ってこないと考えるかもしれません。しかし、それは本末転倒です。
公的仕事に就くこと、市民のためになる仕事を行うという、有意義な価値と、地方行政の力が益々大きくなっていくと思える今後を担う、有為な若者を募集するべきで、金で釣られて入る人間に公共サービスを担わせるのはミスマッチだと思います。