知らないで済ませられないこと

もう10年ほど前になるでしょうか。
アメリカの最近のパーティーではアルコールを飲まずに、水を飲むのがクールとされ、特にヤングエグゼクテイブは、水を飲んでいるなどと聞いて、驚いたことがありました。

それ以前には、アメリカの経営者には肥満体の人はいない。自分の体も自己管理できない人間には、経営を任せられないという風潮があるということでしたが、確かにその当時でも、TVや雑誌で見るアメリカの経営者にはスリムな人が多いように思いました。

ただし、エグゼクテイブの間ではそうした風潮があるにしても、廉価なファーストフードに頼りがちな人達の間には、肥満は当時から今に至っても依然大きな問題で、肥満に関係する医療費が自治体の財政を圧迫していると言われています。
また、アメリカ人の成人の3人に1人は肥満だなどとも言われているようです。


アメリカのソフトドリンクの容器の種類は、日本と同様Sサイズ、Mサイズ、Lサイズと呼び方は同じでも、大きさが全く違うとは良く聞きますが、アメリカのSサイズが日本のLサイズよりも大きかったりもするそうです。

昨年、ニューヨーク市は、深刻化する肥満問題に対応するため、特大サイズの炭酸飲料の販売を規制する方針を決めたという報道がありました。映画館ではLサイズのドリンクが割安なために、大概が巨大なLサイズを注文するとのことです。

アメリカの肥満の問題は、そのまま貧富の問題にもつながっています。
肥満がどういう人達に生じているかが、それを示しているようです。


話題は変わりますが、以前、アメリカに数年暮らしていた知人に聞いた話の中で、アメリカでは50万キロ以上の走行距離の中古車市場が存在するというものがありました。
50万キロと聞いて、なんとオーバーなと私は思い、それ以来、そのことはすっかり忘れていました。

それから暫くして、エミネムの自伝的作品と言われた映画「8マイル」を見に行った時のことでした。
私はスクリーンを見て衝撃を受けました。
知人が話していた、日本では廃車にするような車が販売されているシーンがあったのです。

スクリーンは最下層の、どうあがいても抜け出せそうにない世界で、もがくように生きている人々を映し出していました。アメリカ社会の暗部です。
トレーラーハウスでの生活、ドラッグ、セックス、暴力、服従、裏切り、追従、、、、
よくこの絶望的な生活から這い上がってきたものだと思います。
エミネムの存在は奇跡に近いことと思います。

あの時、知人は私とアメリカ社会の歪について話をしたかったのだと思いました。それが、自分の感受性の鈍さに知人は失望したことでしょう。
私は、自分を恥ずかしく思いました。

現実を認識したところで社会を変えることはできませんが、平凡な生活にどっぷりとつかり、知ろうとしないことが、大変罪なことであり、知ろうとしないことは傍観者であるのだと思いました。

おびただしい情報を受容できる今の時代に生きる私達にとって、無知が知と呼べる程度は極めて低く、それは罪に近いものだと思います。