ロングテール現象への向き合い方(2)

先日は、新聞の部数が将来的に減少傾向になるのは、セグメントされない総花的な全国紙や地方新聞ではないか、という主旨のことを記しました。

こうした現象は、他の世界でも顕著です。
昔を知る人間にとって、今のデパート業界の変わり様を見ると、時の流れとともに、商売の形態の変化についていくことの難しさに嘆息せざるを得ません。
三越の圧倒的な販売力を実感していた頃が、懐かしく感じられます。

デパートが百貨店とも呼称されていた時代、各デパートは扱い商品も多様で、その商品の品種についても複数ブランドを取り揃える、総花的な販売店舗でした。実態はデパート空間を細分化して貸す賃貸業という側面が大きかったですが、どこのデパートに行っても、ブランド比重に若干の違いはあるにしても、そこに行けば、大概の物は手に入るというショッピングスペースでした。

それが、趣味・嗜好が細分化していくにつれ、お客様が専門店志向になる傾向が大きくなり、ブランド専門店や専門店の集まったショッピングモールへと客足を奪われるようになりました。
実は、デパートそのものは空間賃貸業であり、専門店の集まりでもありましたが、消費者からは、そうとは受け止めにくく、デパートへの出店企業はそのデパートの色のために、テナント企業そのものの専門色が薄いという見方をされやすかったのではないかと思います。

専門店の集まるショッピングモールは、全体のくくり方を、三越高島屋伊勢丹等のくくり方ではなく、それぞれの専門店の名前を前面に押すようなイメージ戦略を組む必要があります。
また、専門店化が進むということは、OEMで供給し合うということはありますが、各ブランド企業が店舗に見合う分だけの在庫を持つことになります。デパートへの上納金のレベルにもよりますので一概には言えませんが、デパートの中に一定の売り場面積を借りていた時よりも、在庫のコストや、人員配置のコストがかかるようになるでしょう。

こうした対応により、消費者の多様な嗜好に合わせた経営が成り立つのでしたら良いのですが、店舗により、対応できなくなる場合があると想定できます。この現象は、リアルな世界でのロングテールの現象に対して、どう対応を取るかということですから。

リアルな小売店舗の対応は、ロングテール現象でネットで成功しているビジネスモデルとは矛盾した問題を孕んでいます。
それゆえ、このリアルな世界でのビジネスモデルの問題点は、流行を読めなかったために生じる在庫処分、少量多品種商品に対する製造体制、急な売れ筋商品の変更に応じられる生産体制、製造コストの圧縮等々、在庫に関してのコスト高が、製造の問題と関連して、企業経営の由々しき問題となる筈です。


ロングテールの現象はアマゾンが出てきてから、しきりに最近のマーケッテイング理論のように言われていますが、前述のように、昔からこの現象による問題点は議論されており、特に小売り業界ではその現象への対応で、各企業は存続の危機と向き合ってきていると言えます。

各専門店が、リアルな販売とネット販売とを、どう補完しあっていけるかということも一つのカギになると思います。
また、消費者はいろいろな商品をリアルに眺めたり、手に取りたいもの。
そのための在庫コストをカバーするには、企業体力が重要になります。

各ブランドの、総合体のような企業グループ、例えばLVMHグループのような拡大の仕方による競争力を高める方法も一つの流れになるのかもしれません。