三菱車リコールの続き

今回の軽自動車のエンジンオイル漏れに関して、報道された内容以外は知る由もありませんが、三菱自動車工業の対応をみると、企業の社会的必要性とは何だろうと、素朴な疑問を感じます。

経過に関して、 2月3日(日)9時0分配信の産経新聞の記事を抜粋してみます。

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 今回のリコールの発端は17年にまでさかのぼる。三菱自は、軽自動車のエンジンオイル漏れの不具合情報を把握しながら重視せず、22年11月まで長期間にわたってリコールを届け出なかった。国交省は不具合を独自に検証し、2度にわたりリコールを届けるように指導。「オイルの漏れ方を過小に評価した」(国交省)など、三菱自の不適切な対応に、同省は疑念を深めていった。

 その後も、内部通報をきっかけに昨年1月と3月にリコールを届けた。12月19日に届け出た4回目のリコールのすべてを合わせると、対象車は定番の商用車「ミニキャブ」など10車種、約176万台に上り、同一の不具合を理由とする届け出台数で「過去最多」の不名誉な記録もつくった。国交省は立ち入り検査で入手した資料をもとに、不具合を隠すなどの法令違反がなかったか確認する作業を進め、3月末までに報告書をまとめる予定だ。

 なぜ、三菱自はリコールの届け出に消極的な姿勢を取っていたのか。三菱自が過去のリコール隠しで経営危機に陥った際、三菱グループが約4千億円を出資するなど総力を挙げてバックアップ。三菱商事から益子修氏が社長に就任するなどして、社内の抜本的改革に乗り出した。

 16年6月、社内を横断する品質統括や企業の社会的責任(CSR)の専門部署を設置。「お客さま第一に生まれ変わり、他社をリードして品質問題に力を入れている」(同社幹部)との自負もあった。それだけに、「やみくもにリコールを届け出るのではなく原因究明を行い、きちんとした形で報告する」(同)形式にこだわった。

 しびれを切らした国交省からリコール届け出を促されたが、社内の専門部署が下した「リコール不要」との判断もあり、結果的に後手後手の対応になってしまったという。こうした事情について、三菱自側は「意図的な虚偽報告ではなく、リコールの届け出が遅れた」と釈明する。ただ、業界では「リコールに踏み切れば、ブランドイメージが傷つきかねないと判断したのでは」(大手自動車関係者)と勘ぐる見方もある。

 一方で、三菱自は東南アジアの新興国での販売が好調なほか、国内でも1月24日、トヨタに続き2社目のプラグインハイブリッド(PHV)「アウトランダーPHEV」を発売。社運を賭けて開発・発売した電気自動車(EV)「i−MiEV(アイミーブ)」の販売も強化するなど、環境技術を前面に押し出す攻めの姿勢を見せていた。益子社長も、新型車のデビューを華々しく飾りたかったとみられるが、昨年の発表会を取りやめるなど、国交省による調査入り以来、「審判が下るまで自分が出るべきではない」と表舞台に出ることを自粛している。

 21〜22年に世界各地で約1千万台の大規模リコールをした問題を教訓に、トヨタ自動車は、「疑いがあれば躊躇(ちゅうちょ)せずリコールする」(幹部)という姿勢に転換。品質管理の新組織を立ち上げ、情報を世界的に共有する態勢を整えたほか、自主的に改善・修理する「サービスキャンペーン」も積極活用するようになった。日産自動車やホンダなども歩調を合わせ、リコールを「安全や品質重視の姿勢をアピールできる場」と捉えている。

 こうした状況のなかでの三菱自の消極的な姿勢に、国交省が「リコール隠しの文化が払拭できていない」との判断に傾いたのは自然の流れともいえる。リコール問題の再燃で、三菱自がユーザーの信頼を取り戻すまでの道のりは、再び遠のいた。(飯田耕司)

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トヨタの約1千万台の大規模リコールはまだ記憶に新しい出来事です。あの時はGMが立ち直る時間を稼ぐ必要もあったためか、アメリカのトヨタ叩きを感じさせる場面がありました。
トヨタの経営悪化への懸念する声もたびたび耳にしましたが、トヨタのリコールへの前向きな取り組みは、決してマイナスイメージばかりではありませんでした。

リコールを「安全や品質重視の姿勢をアピールできる場」と捉えているという、トヨタや日産、ホンダなどの自動車メーカーに対し、

三菱の「やみくもにリコールを届け出るのではなく原因究明を行い、きちんとした形で報告する」形式にこだわった、というのは、どうしてもとってつけたような理由に聞こえます。

国交省は独自に検証した結果、09年10月と12月にリコールを実施するよう指導したといいます。
それに対して、三菱自動車は10年11月に最初のリコールを行ったが、実施前、国交省に対し、「オイルは大量に漏れない」などと実態とは異なった不適切な説明をしたというのです。
管轄省庁の指導に対して、こうしたなめきったような態度で臨むというのが、私にはどうも理解できません。
役所の姿勢に対して高をくくれる背景の存在などを疑ってしまいます。低位のメーカーといっても財閥系企業のプライドはあるでしょうが、プライドだけで強く出られるとも思えませんし、、

クレームは信頼を勝ち得る良いチャンスなどと言います。新興の企業にはCSを徹底的に追及して、クレームをマイナス評価とは考えない企業が多いですが、歴史がありプライドが高く名前を重んじる企業には、CSとは口先だけで実際は官僚的で秘密主義な場合も少なくないように思えます。

自社の社会的価値が貶められるような事実を把握した時に、それをひた隠しにしようという行動原理の企業は少なくないとは思いますが、そうしたことに神経を使うのは精神衛生上良くない、大変なエネルギーを使います。社員にはストレスを強いますし、誠実な社員なら、やりきれない思いを抱えて仕事を続けなくてはなりません。
そうして神経をすり減らして、結局墓穴を掘ることになる場合もあります。

ユーザーのためには、どうしたら良いか、どうあるべきかということを立ち位置とすれば、行動は単純明快になりますし、結果的に信頼される場合も多いと思うのですが、、