ロングテールの、しっぽの先で

昨日、セミナー会場から街の様子を漫然と眺めながら新宿駅まで歩きました。

途中、Jazz Cafe Bar的なお店を何軒か見かけました。
最初の1軒を発見したのは商業ビルがずらりと並んでいる通りですが、人通りが少ない場所です。

『こんなところでやってるんだ』という新鮮な驚きが、自分の率直な感想でした。中の様子が気になり、ガラス窓から中を覗き込んでみましたが(怪しいオヤジです)良く分かりません。
時間がなかったので、中に入るわけにも行きませんでしたので、気になりながらも、そのまま歩いて行くと、明治通りに出る手前で同じ通りの反対側にも同じような類のお店が。
『へー、結構あるんだなあ』などと思いながら、伊勢丹の脇を通って駅へと行くと、途中でも何軒か見つけました。
結果、『東京って、やっぱりすごいなあー』という田舎者の感想をもった次第です。


静岡市のような地方都市では、飲食店や流通店舗等消費者を呼び起こす必要のある店舗で、変に差別化をしてしまうと人口が限られていますので、経営が成り立たなくなる場合があります。

私がお気に入りだったライブバーはジャズ専門だったためか、営業が続けられなくなり数年前に店を閉めてしまいました。
その店は、以前は別な場所で営業をしていました。その場所で営業していた頃、家賃を滞納していて大変らしいと聞いていました。
そんな話を聞いてから暫らくして店を違う場所へ移したのです。あまり目立たないビルですが、通りはそれまでの所よりも、はるかに賑わっている場所でした。家賃の安い店舗という選択ではなく、少しでも来店者を増やしたいという思いでの店舗の移転だったのだろうかと思います。

このお店は、閉店する前まで、良心的で本格的なジャズのお店でした。
私はその前の場所で営業していた頃のお店の雰囲気が好きでした。
カウンターの近くの天井が下がり天井で、そこに外国紙幣が無造作に貼りつけてあったり、缶ピースがボトルの棚に置いてあるのがとてもしっくりとしていたり、
まがいもののようで、そんな感じはせずに、俗っぽいのに高貴な雰囲気を感じたりと、色彩は鮮やかではありませんが、ある面でキッチュな感覚とでもいえるものに思います。何てことのない風景が、とても魅力的でした。
演奏も近い場所で楽しめ、セッションもオーソドックスですが、演奏者たちも楽しんでいるのが分かり、とても楽しくなる場所でした、、、
とっ、とっ、と、、、オヤジの懐古趣味になってしまいました。

以前、ソニー・ロリンズの静岡公演に息子を連れて行ったことがありました。世界的な巨匠なのでチケットを取るのも大変だったのかな、などと思っていましたが、会場に入ったら、中はガラガラ。
何だかソニー・ロリンズに申し訳ないような、ちょっと寂しいような思いをしました。おまけに、時間が遅かったせいか、小学生だった息子は途中で寝てしまいました・・・

ジャズは、音楽業界の中では、ロングテールの、長ーい、長い、しっぽの先っちょの部分になっているようです。
静岡のジャズ愛好家が少ないのは確かだと思いますが、東京のCDショップを覗いたりしても、売り場の棚の狭さをみると、マイナーなんだなーとがっかりします。


ジャズというジャンルは地方都市では採算面から難しい面があると思いますが、新参のLife Timeは健闘しているようです。
経営者の熱意と経営力の違いを感じさせますが、ジャズのライブハウスというものを更にセグメントすることで、別な展開ができるというのはとても参考になります。
ライブという店の機能を徹底的に分解し、需要の要素もまた徹底的に精査・分析して、古いのにエキサィティングで新しい店になっています。こうしたことを、プロのミュージシャンでもある経営者は、恐らく感覚的に感じ取っているのでしょう。

この気付き、深掘りしてみると、重要なことにぶつかりそうです。