カンボジアの話(続)

先般カンボジアの話をしてくれた知人から、その後の報告がありました。

知人は、カンボジアで女性を何人か置くスナックバーなどを、何店舗か経営しようと本気で思っていたようです。
その後彼は、県内企業の海外進出を支援している県の窓口で個別相談に行ったそうです。

その結果がどうだったのか、私は興味津々でした。

「結局、諦めました」

どういうことかと言えば、現地で風俗関係を営業する場合、警察や軍が絡んでくるそうです。
「命がいくつあっても足らないよ、と言われたんですよ」

そういうこと!

治安が良くなったと言っても、軍が強くなければ統治は難しいでしょう。それが平和を維持していこうとする政権であれば、致し方ないことで、人権の抑圧が大きな問題とならない限り、通過点として世界も認めざるを得ない面があります。
他国からの侵略の恐れがあったり、自国内での政権争いで武装蜂起する勢力があったり、その国ではマイナーなために抑圧されている宗教があったり、麻薬などの権益により潤っている勢力があったりすると、国内が混乱している間に、外から侵略されてしまいます。

例えば、ミヤンマー(ビルマ)では、宗主国イギリスからの独立を日本が手助けしてイギリスを排除して、ビルマ国を建設しますが、インドにいるイギリスを駆逐するための拠点として、日本は軍をビルマに駐留させ撤退しようとしません。
外国勢力を排除して完全に独立できると思っていたビルマ国民軍などは、イギリスの手を借りて日本の追い出しにかかります。
有名なインパール作戦で敗北した日本は、ビルマからも手を引きますが、日本がいなくなったら、イギリスはまたしてもビルマを植民地化してしまいます。

酷いことを紳士的に行い、自国の利益と慾に駆られた残虐性を、綺麗な言葉で知性を感じさせるように発信するのが、先進国の一大特徴と言えると思いますが、日本では、時代の空気を無視して、綺麗事で歴史を眺めようとする結果、自分の国を著しく貶めようとする人達がいます。子供達に、歴史が定まっていないからという逃げの理由で、近現代史を学ぶ機会を与えないことが、日本人から思考能力を奪うことになっているように思えるのです。

さて、混乱している国を、他国に渡したくないために、国民を混乱に陥れないために、軍によるクーデターを起こして軍事政権が統治するということは、やむを得ない場合があるだろうと私は思います。
ただし、当初は国民の幸福、国の平和を祈願していた軍政だったのが、権力への渇望からか、変質してしまう場合があるのが、権力の魔力なのでしょう。

組織が強すぎる社会では、その組織は硬直化しやすい面が出てきます。組織の硬直化によりシワ寄せを受ける外部で、そのために泣く人が多くなれば、そこで発生するのはアンダー・ザ・テーブルでの交渉。賄賂がはびこるようになることがあります。賄賂のやり取りが行われたり、強い組織を利用して利権を求める人達は、強い組織だけに表面に現れると失脚の恐れが常につきまとったり、利権を守るためには人の命など軽いと考えやすくもなります。
組織での裏に廻った『許認可』をめぐっては、人の命も踏み台にする土壌にもなっていくでしょう。

知人の計画は、こうした危ない世界に入り込むことになるようで、振り出しに戻ってしまいました。
残念なことです。


さて、先日は、やはりカンボジアで、農園と飲食をやる予定と言う青年と話をする機会がありました。
本業は製造業ですが、カンボジアの農園を借りる段取りができていて、また、別に飲食業も出店する予定とのこと。この飲食は、ラーメン屋だそうです。
ラーメン店の現地従業員は大変優秀な若者を予定しているそうで、いったん日本に呼んで店の切り盛り等の研修を行うということでした。

先日のの中国に進出した床屋さんの例では、従業員がすぐ他の店に転職してしまうということでした。
そこでは、スタッフの能力を高める面倒をみなくてもよいというのはメリットかもしれませんが、ロイヤリテイーが醸成されないというデメリットもあります。漢民族クメール人という民族的な性向の違いもあるかもしれませんが、中核とするスタッフの育成に関しては、ラーメン店を任せるために日本に呼んで研修をするという方が、古い日本的労使慣行に慣れてしまっている私には自然に思えます。

調理設備を揃えるのが、カンボジアでは大変というのも一つの理由だそうですが、日本で絆を深めて経営理念を叩き込みたいという思惑もあるようです。


2013-02-07 鈍痛のような、これって幸せ?
の中で、
コマツアメリカ事業所の件を以前記しましたが、
日本的慣行が命取りになる場合もあり、中国人のように従業員自身がドライに割り切っていてくれたほうが、経営者とするとやりやすい場合も考えられます。
チャイナナイズでも、アメリカナイズでもなく、労使双方がハッピーになるように、うまく機能するような日本的経営モデルになってくれたら素敵だなと思います。