いよいよ日米合意

本日12日、日米政府は、日本の環太平洋連携協定(TPP)交渉参加に向けた事前協議で正式に合意しました。

TPP参加は安倍政権の中で一番難しい案件の一つと思います。
当初は自民党内でも、参議院選挙の後でなければとても合意に向けた動きはできないだろうという空気が大勢でしたが、はるかに前倒して交渉参加に向かって舵を切りました。
このことだけでも、安倍氏は並みの政治家ではないことが分かりますが、このTPP問題が、その類まれな見識・胆識のある安倍氏重篤な懸念材料とならないことを願います。
これまでの安倍政権の、特に経済政策を支持したと見られる高い支持率をバックに、従前のTPPに対する空気をガラッと変えてしまい、日米合意となったわけです。

報道によりますと、米国が自動車分野の関税撤廃を先送りすることを容認する一方、日本郵政グループのかんぽ生命保険についての事業拡大を当面凍結するとしたそうです。

安倍首相はあくまで前向きで、閣僚会議の席上、「日米の合意はわが国の国益を守るものだ」と表明し、記者団に対しても「交渉に参加して日本主導でTPPを進めていきたい」と主体的に取り組むことを強調したそうです。 

安倍政権が聖域としていますのは、コメ、牛肉・豚肉、麦、砂糖等の甘味資源、乳製品の5品目です。
TPP参加によって、すべての農産物の関税が撤廃になれば、これらの5品目は海外からの輸入品に置き換えられてしまうだろうと言われています。それゆえ、安倍首相は関税撤廃の例外品に、この5品目を据え置きたいと考えています。

このTPPに関しては、今までも報道番組でたびたび取り上げられてきましたが、推進派の識者の話を聞いても、推進しようとしている人達の持っている情報があまりに少ないので、本当にこの人達はそれだけの情報で、国家間の貿易の基本となる重要な取り決めを行おうとしているのだろうかと、半ば呆れる気持ちで眺めていたというのが正直なところです。

他方では、反対している人達というより組織は、自分達の既得権を守るために、TPPの本質ではない所を論ったりしているような気がし、TPPを曲解しているのではないかと感じるところがあります。
また、国際競争にさらされたら、自社の売上に影響があるため反対などという、今まで政府の庇護で自助努力をしてこなかったために、国内で生き延びてこられた業界などもあり、その発言はTPPをいいように捉えて、反対の理由付けとしているところもあるように見えます。

結局、TPPに関しての情報量が少ないために、賛成派も反対派も理解が不十分なために、かみあう議論ができにくいということがあったのではないでしょうか。

以前も触れましたが、アメリカ国民でさえもTPPに関しての情報は十分把握しておらず、密室の中で議論されているという感想を多くの人が持っています。
TPPはアメリカ企業の意向によるもので、アメリカの国民も蚊帳の外というのが実態のようで、不信感を持っている国民も少なくないようです。


実際にTPPの交渉は密室で行われていて、その情報は外にはなかなか漏れてこないようです。

交渉のテーブルでは、こんな会話が行われているのではないでしょうか。

自由貿易をTPPにより促進すれば、御国は一層の経済発展を遂げますよ。(アメリカ企業の物で溢れるようになりますよ)

TPPが実現すれば、アメリカは御国にたくさん投資しますよ。(もちろん儲かるのは私達アメリカ企業ですが、御国の国民も豊かになり、お互いにメリットがありますよ)

御国がTPPに参加することで、物が豊富になり、生活水準が上がりますよ。(アメリカの多国籍企業が御国で製造するようになれば、質の良いものをたくさん供給できますから、どんどん消費して下さいね!)

御国に、安くて品質の良い商品を提供しますよ。(もちろんアメリカ企業がね!)

時代に合わない物作りや農業は止めて、アメリカの安い商品や農産物を購入して豊かな生活を送りましょう。

経済危機になればアメリカが御国を支えますよ。金融や保険はアメリカ企業のお手の物。質の良いサービスを安価に提供できますから、アメリカ企業にお任せを。


実態は、TPPとは貿易のみでなく、アメリカ企業を儲けさせるため、アメリカ資本を効果的に投資できるための整備条件のように思えます。

日本も一枚絡んで、発展途上国から儲けようというのが、TPPを推進する日本の産業界の本音でしょう。
欧米と同じ視点で、アジアや太平洋地域の国々に接しようとするのも、志がないようで嫌な気がします。

アメリカの実力企業のための、アメリカの実力企業による、アメリカ国民のためではなくアメリカの実力企業のためのTPPというのが実態に思えます。

志がないと目が曇る場合が多いので、日本の経済界も、アメリカ企業にしてやられなければ良いですが。