トップセールス

アメリカの歴代大統領は、友好国訪問の際に産業界からもスタッフを引き連れ、その国にアメリカが貢献できる産業のアピールを積極的に行ってきたという強い印象があります。

一方では、日本の政治家は積極的に海外で日本の産業界の後押しをするという印象は薄く、日米を比較する時、アメリカの産業界は恵まれているという印象を持っていました。(大統領選の支援のお礼の意味もあるのでしょうが)

ただし、日本も、日米繊維交渉など政治問題になると力を発揮します。
また、石油危機の時は、なりふり構わず行動しなければ国の機能が止まってしまいますので、政治家が積極的に動いていた記憶がありますが、平時の時には、日本の政治家が海外に向けて、日本の産業界の後押しをするといった働きは鈍いように思います。
企業を積極的に応援するという面で、日本人としての節度が、お金儲け⇒芳しくないこと、と抑制する方向に働くのかもしれないと思います。
しかし、いまや政治の世界でも、多くの問題を解決するきっかけとなるのは経済の問題である場合が多く、相互に経済的なメリットをもたらす外交は、とても重要な意味を持っています。


安倍首相は、今回の大型連休中の28日から5月4日までの日程でロシア、サウジ、UAE、トルコを訪問しています。
アラブ首長国連邦(UAE)に対しては、平成30年に期限切れとなる日本企業の油田権益の延長の要請が、大きな目的のようです。成長戦略を下支えするエネルギー安全保障の一環ということですね。また、今後入札が予定される油田にも日本企業が新規参入できるよう求めるそうです。

昨日は、2国間の原子力協定への署名を行い、政治や経済など幅広く関係強化を図る共同声明の報道がされていました。
東京電力福島第一原発事故後、日本が他国と原子力協定を結ぶのは初めてになり、この協定に基づいて、日本は今後、原発関連技術を輸出することになります。
UAEでは12基の原発建設計画があるそうで、その受注も視野に入れたものでしょう。

原発に関しては、日本だけで物事を考えていると、なかなか積極的な施策を出しにくいと思いますが、宇宙世界の中での新しいパラダイムを念頭にいれながらも、現に世界の国々が求めているものを積極的に支援していくことは、とても建設的で重要なことと思います。クリーンなエネルギーに転換していく上でも、原子力をより安全にコントロールしていく技術の開発、その技術による国内外での展開は、必要不可欠なことと思います。


サウジアラビアとは投資協定を締結し、エネルギー関連企業の進出を促し石油の安定調達につなげたり、新型天然ガスシェールガス」などの開発を進めつつ、原油調達先を手厚くし、安価なエネルギーを確保し国内産業のコストを低減させる戦略とのこと。

サウジとは原発輸出を見込み人材育成支援で合意するなど、首相が掲げる「経済外交」の第1弾として資源獲得やインフラ輸出でトップセールスを展開する予定です。

こうした目的は「エネルギー安全保障の強化や日本企業の進出支援、包括的パートナーシップの強化が目的だ」と説明しています。

サウジとUAEは日本の原油輸入先の1位、2位になり、重要な友好国ですが、両国とも若者の失業率が高く、石油に続く次世代産業の育成が課題となっています。日本は、環境や省エネの技術支援の提案を考えているようです。
インフラ輸出も安倍政権の重点政策で、日本の支援でクリーンなインフラを整備することで両国の産業創出を側面支援していこうというのですね。

今回の中東歴訪では、現地での原発建設受注を見据えた交渉に乗り出し、前述したようにサウジとは原子力関連の人材育成支援で合意。
UAEに次いでトルコとも原発輸出に必要な原子力協定を締結する予定です。

首相には経済界から50〜60人が同行しているそうで、淡水化プラントや石油化学プラント、交通システムなどの日本企業の高い技術力をアピールするほか、医療機器や農産物の輸出拡大も図り、官民一体で日本経済復活に向けて積極的な外交とともにトップセールスを展開しています。


日本国内では原発に反対し続けた管元総理が、ベトナム原発を売りこんだり、個別に外交得点を稼ぐための営業はありますが、今回の政権の対応は、成長戦略等の一環として地道に政策実現をトップセールスで行おうとしている点に特徴があります。
後進国を金儲けの対象とした、あこぎな外遊、位に報じるメデイアや知識人もあるかもしれませんが、今までにない官民上げてのセールスは新鮮に映ります。