食糧危機を救うのか、便乗して儲けるだけか?

米国オレゴン州の農場で、未認可の遺伝子組み換えが行われた小麦が自生していることが分ったそうです。
この小麦は遺伝子組み換えにより、除草剤に対しての耐性を持つようになったそうです。
発端は今年の4月に、除草剤を散布したのに枯れずに生育している小麦が農場内に見つかったことから、不審に思った農家が、オレゴン州立大学にサンプルを送って調べてもらった結果、遺伝子組み換え(GM)を行った小麦であることが判明したと言うのです。

この小麦を開発したのは、GM大豆の時も世界的に名を売ったモンサント社
モンサントの不自然な食べ物」という映画が、以前一部で紹介されていましたが、日本のマスコミはこういうテーマを積極的に報道しませんので、日本国内ではあまり話題にならなかったと思います。

モンサントのGM大豆の時は、除草剤を吸い上げて育った大豆を食べて安全なのだろうかと不安に感じた人は多かったと思います。
アメリカの消費者のなかにも、モンサント社の食への姿勢に疑問を投げかけている人は少なくありません。

しかし、企業というとまだまだ男性社会である日本では、消費者の健康よりは利潤追求に偏りがちです。将来、GM食品の規制が緩和されれば金になるだろうと考える企業は多いでしょう。その研究成果や方向を見定めようとする食品やバイオ関連の企業は少なくないと思います。
食品専門の企業以外でも、例えば三菱や住友化学などもモンサントと提携していましたね。(あれっ、今の経団連会長ってどこ出身でしたっけ?)
人造イクラを開発したのも化学会社でしたので、研究の相乗効果は可能性を感じさせて面白いのですが。モンサント社も、元々化学・繊維企業でした。

ラウンドアップで農場の雑草を根こそぎ枯らしあとに、大豆を栽培し、収穫した大豆を食するというのは、どうも気持ちの良いものではありません。農薬の種類にもよるでしょうが、残留農薬が喘息などの呼吸器系の病気や癌に影響するとも言われますので、除草剤に耐性のある農作物を開発するというのは可能性としては興味がありますが、商品化としてはどうかと思います。(フランスの最高裁は、モンサントの「ラウンドアップは生分解性で土壌に蓄積されません」「安全で人や環境への有害な影響を引き起こすことはありません」という広告を虚偽広告であると判決したそうです)

件のGM小麦はモンサント社は売れないと判断して開発を断念したそうです。
2005年には試験栽培も中断したそうですが、今頃になって農薬で枯れずに自生しているというのは、生態系に影響を及ぼしていると考えられるのではないでしょうか。

GM植物と一般の植物の交配で、奇妙な花の咲く植物が生まれているなどという報告もあります。遺伝子関連の影響度は長い期間で追跡調査をして欲しいと思います。

ルモンドによると、農業国フランスのカーン大学で2年間ラットに遺伝子組み換えコーンの餌を与えたら、異様に大きな腫瘍を生じて死亡したそうで、そのラットの写真を見ると不安を感じます。
アメリカでは、90日間遺伝子組み換えの餌を与えたラットの健康には影響がなかったので安全としているのですが。

この辺は、BSEに対するアメリカの食に対する姿勢を髣髴させます。アメリカの食文化が何となく信頼できないと思えるのも、こういう事実の集積によると思うのです。どこの国にも企業と政治家の癒着はあると思いますが、アメリカはそのスケールが大きいので、より危険な香りを感じます。

モンサントのビジネスモデルは、一度ラウンドアップ漬けになった土壌では雑草も一般の作物も育たなくなるため、その土壌に遺伝子操作によりラウンドアップに耐性を有する遺伝子組み換え作物の種子の大豆やコーン、菜種、綿実、テンサイ、アルファルファ等をセット販売するというものです。一度モンサントの農薬と種子をセットで使用した農家はモンサントに依存せざるを得なくなるという商法のようです。
これを頭が良いと思うか、えげつないと思うか、、


茨城県稲敷郡河内町)にはモンサントの農場があるそうですので、周辺の植物や農作物に注意してもらいたいですね。もっとも、アメリカやカナダでは、モンサント社の花粉を受粉した近隣の農家が訴えられ破産した例もあるようです。一般人に対して訴訟をすぐ起こして賠償金を取ろうとする(黙らせようとする)体質があるようですので、近くに住んでいるということだけで気が許せません。そちらにも注意しなければならないのですね。