表示への慣れ

市販されている加工食品には、何種類もの香料、着色料、添加物、調製品等が記載されているのが当たり前になってしまいました。記載がないものを見ると、表示義務違反ではないかなどと疑うこともあります。添加物を入れないで堅実に作っているメーカーに、大変失礼なことなのですが。

この表示義務が課せられるようになる前後の時期には、いろいろな食品に添加物や色素等の表示をした場合、消費者に受け入れられるだろうかと、業界で影響度合いを検討していました。


一例として、植物油脂にはシリコン樹脂を食品添加物として使用していましたが、ドレッシングやサラダ油などの表示にシリコン樹脂などの記載をした場合、消費者は人に良いものなのか不安を感じるのではないだろうかという声が大勢でした。
消費者の購買意欲を削ぐことになり、消費量が落ちることや、企業イメージを損なうことを心配したのです。

シリコンは豊胸手術にも使用しており、アメリカでは健康被害が問題にされて、豊胸にシリコン樹脂のパックを使用することが禁止されたりしましたので、シリコン樹脂そのものが人間の体に良くないのではないかと思われやすいという懸念もありました。

こうした状況で、業界はシリコン樹脂の添加を止めることにしました。しかし、それは、消費者が直接目にする商品についてだけです。スーパーなどで販売している家庭用商品についてだけはシリコンを添加しないことにしました。

卵黄などとの調合に使うマヨネーズやマーガリンに使う植物油脂には元々シリコンを入れませんでしたが、フライや天ぷら等の加熱に使う油脂にはシリコン樹脂を入れていました。
熱に強いシリコン樹脂には加熱した油の消泡効果があるため、従前の油と比較すると揚げ物などをする際に、油のヘタリを抑制し、揚げ物をする際に油を替える必要性を減少させ、継ぎ足しで同じ油を何度も使えるようするという効用がありました。
だからといって、酸化を抑えているわけではなく、油の劣化を抑制するかわりに体の酸化を招いているのだろうかなどとも思いますが、酸化防止はαトコフェノールなどが機能していますので、過剰摂取しなければシリコン添加の害は少ないように思います。


ただし、業務用の場合は、一般の消費者には含有物が何かなどということを目にする機会は少ないので、業務用の植物油脂はシリコン添加製品のままできましたが、それって、どうなのという視点も必要に思えます。

今の時勢が添加物表記に慣れすぎてしまい、表記すべきかどうかに逡巡していた頃の感性の方が自然だったようにも思えます。