同一労働同一賃金(2)

ユニクロが世界同一賃金を適応するとの報道が、ずいぶん過剰な反響を生んでいるように思います。

ユニクロの海外展開を行っているファーストリテイリング柳井正会長兼社長が、朝日新聞とのインタビューで、世界同一賃金を導入すると明言したことが、大きな波紋を呼んでいます。


・・・一般的なサラリーマンからすると、ついに来るものが来た感はあるだろう。賃金水準の低い新興国のハングリーな若者に勝てる自信はない、いきおい日本人サラリーマンの賃金は新興国水準に下方修正されていくに違いない――そう思った人は少なくないはずだ。将来我が身に降りかかりかねいから大きな反響を呼んだのだと思う。・・・
朝日新聞デジタル版より)


ユニクロの現場の労働条件が厳しいことから、ユニクロブラック企業と評する人が多くなっているようです。
そこにきて、この世界同一賃金の話題。
かつては、ユニクロをもてはやしていた人達まで、F社は問題ある企業と言い出す始末。

労働の質、成果、報酬の方向を国際的な観点から考える良いきっかけになるところですが、とかく企業体質の方向に議論がいきがちになります。


同一労働同一賃金」はILOの原則ですので、F社は特別奇異なことを言っているわけではありません。
F社は海外の何カ国にも展開しているグローバル企業ですので、各国の労働者の質、労働の成果やその報酬とを日常的に比べていることでしょう。

日本の労働者は、昔はワークホリックなどと呼ばれ、休みもろくに取らずに働きすぎるなどと言われていました。過剰な労働により企業間競争に励むのが、アンフェアーだと先進国からは非難されていました。
経済評論家の中には、社畜にならずに自立した社会人を目指せなどと企業人を鼓舞する論調などもありましたが、日本の社会風土や社会のシステムには言及せずに、お気楽で無責任な主張に感じました。

同僚の中には、日本の会社システムに違和感を感じてか、外資系の企業に転職した者もいました。組織の力よりも個人の能力を高めることで企業に貢献するというスタンスが強かったのだろうと思います。現在海外で活躍している若いアスリート達の志向に似ているのだろうと思いますが、当時の企業人でそういう指向性を見せる人は稀少だったように思います。
大部分は、組織のパワーアップを図るために個人はどう行動すべきかという観点で、企業人として生きていたように思います。社畜と類型化されるのかもしれません。
しかし、ある日気がついたら、こうした行動様式のサラリーマンが周りにいなくなってしまっているのです。

さて、日本の労働時間は短くなり、今尚有給が取りにくいなどという声は聞きますが、実際は世界的には休日数はトップクラスになって、働かない国になってしまっているようです。
海外勤務を嫌うどころか、国内の転勤さえも嫌がるのが日本の一般的なサラリーマン像などといわれると、随分変わってしまったなと思います。

前述の新聞からの引用の、
・・・賃金水準の低い新興国のハングリーな若者に勝てる自信はない、いきおい日本人サラリーマンの賃金は新興国水準に下方修正されていくに違いない・・・
というくだりに、日本の今の平均的なサラリーマンの思いを代弁しているのでしょうか。

どうも日本語で物事を組み立てる論理体系というのは、過激な、攻撃的な、批判的な言葉を浴びせられると、思考停止状態に陥りやすいように思えます。

同一労働同一賃金。グローバル企業ならば行き着くかのように思えるF社の論理展開は、いろいろな問題を浮き彫りにしてくれるように思えます。