心うたれる世界

絶対泣けるタイのCMが良いですよ。
昨日のエントリーで記した知人が勧めてくれました。

いつも、楽しいこともシリアスなことも、面白おかしく話してくれるので、
私は逆説的に面白いCMなのだろうと勝手に決め付けていました。

昨晩家に帰って、そのいくつかを見てみました。

私は、予想に反して、このCMの世界にとても感銘を受けました。

タイ生命保険会社のCMです。さもありなん、という場面設定。
映像は日本のCMのような洗練されたものではありません。
日本でしたら、何気ない日常風景でも、鑑賞に堪えるという観点で映像を作る場合が多いのではないかと思います。
しかし、その洗練させて作る行為が、日常の持つ意味を薄めてしまう場合もあります。

不器用な映像です。論理的矛盾個所もあります。しかし、人生を深いところでとらえているのが良く分ります。
人の表情、ストーリーが泥臭く、生々しいのです。

聾唖者の父を持つ娘。
多感な時期の娘の鬱屈。
父の前向きな自分への愛情がうっとうしくて嫌悪感を感じてしまう娘。
怒りの感情を、自分に愛情を注いでくれている父親にぶつけてしまう娘。
事件の後、父娘の関係の質が変わりそうな予感。
しかし、さほど変わらない日常が続いていくのでしょう。


アルツハイマーの妻を介護している夫。
若かった頃のように妻と踊る男性。踊り終わってからの妻の一言にちょっとガックリ。
日常はハッピーエンドではありません。ハッピーエンドではないけれど、その日常を受け入れて精一杯生きているのが伝わってきます。奥さんの症状も良くあるパターンで、ありのままに近く。ありのままは残酷です。


日本でこうしたテーマを敷衍しようとしたら、もっときれいにお涙を頂戴できるように脚色するのではないだろうかと思います。たとえ、見て、好ましく感じても、現実から遠くなりがちです。
You Tubeでは日本の泣けるCMもあります。比較してみると、焦点の当て方が違うのが分ります。


日常的にありうる話を自然に流しているようですが、人生に対する洞察が、日本の製作者とは違うように思います。
どこにでもありそうに作るのに、実はなかなかありえない日本の作品世界。
それに比して、どこにでもありえて珍しくもない風景。しかし、日常の中にこそドラマがあるのを気付かせてくれます。受け入れるしかない、その日常を、精一杯に生きようとしている人達。
製作会社がうまいと言えばそれまでかもしれませんが、その映像がCMとして普通に受け入れられている社会に、畏敬の念を抱きます。

私はタイに対して、無意識にも優越感を持っていたような気がします。
しかし、この映像を見て、タイの人達の飾らない日常が、自分よりも圧倒的に人生を深く、前向きに生きようとしているのに気付かされます。
私は涙が溢れてきて、自分を恥ずかしく思います。
日本にも、こうした映像を普通に受け入れていた時代がありましたが、遥か昔のようです。


タイからの留学生の話では、10年以上前には日本のドラマもTVでよく放映していたそうですが、今では日本のドラマを見る人は少なくなったといいます。韓国の売込みが凄いらしく、今一番旬なのは、韓国ドラマにK−POPだそうです。
CMでもこの種の映像が流れるタイの国。その人達を満足させるドラマは、日本では少ないのでしょう。


タイ生命保険のCM

http://www.youtube.com/watch?v=WEe9Z0YagOA

http://www.youtube.com/watch?v=D89dbi6JRN8

http://www.youtube.com/watch?v=QvIq_q7xL3s

http://www.youtube.com/watch?v=8Y8uTho_Js0

http://www.youtube.com/watch?v=_m-JsdtkLRQ

http://www.youtube.com/watch?v=O2_j7a7_G-0&list=PLD4BFDCD2BF09848D