同一労働同一賃金(4)

先般のユニクロの問題に戻ります。
この問題は、今欧州が苦しんでいる、今までの産業基盤に依っていた既得権者の問題、若年者の失業問題、労働力の流動化の問題、移民の問題等々、今後、日本も直面することになる問題につながってくるように思えます。
これはいくつかの面で現象を切り取って問題を浮き彫りにしないと、煮詰めにくいと思えます。
とはいっても正攻法では、難しそうですので、天邪鬼的に眺めてみたいと思います。

ヨーロッパでは、長年先進国としての恵まれた社会環境に慣れて、厳しい条件で働くことを厭う自国民が、移民に仕事を奪われています。若い人達の就業機会が少なくなって、デモや暴動のきっかけへとなってしまうこともあります。


先般引用したユニクロに関する朝日新聞デジタル版の記事の、

・・・一般的なサラリーマンからすると、ついに来るものが来た感はあるだろう。賃金水準の低い新興国のハングリーな若者に勝てる自信はない、いきおい日本人サラリーマンの賃金は新興国水準に下方修正されていくに違いない――そう思った人は少なくないはずだ。将来我が身に降りかかりかねいから大きな反響を呼んだのだと思う。・・・

という箇所は、まさにヨーロッパの若者が面していることと似たような状況を、ユニクロが世界同一賃金でもたらすのではないかという問題提起でもあります。

ヨーロッパの場合は移民に比較的単純な仕事から奪われてしまっているため、特に、職業人としての能力をこれから磨いていかなければならない、社会人デビューをしようという若年者の雇用機会が奪われることになっています。

栄華を極めた時代の植民地政策が、今頃既得権者たちの首を絞めているという面があると思います。自ら蒔いた種という面もあるのではないでしょうか。
植民地の産業や住人達の雇用を真剣に考え、植民地を消費地としても興隆させ、自分達のことのように育てていれば、深刻度はもう少し違っていると思います。
欧州の植民地政策は、日本が台湾を統治した際の手法とは明らかに違います。

さて、今の日本は、海外からの労働者に優しくありませんし、寛大には移民の受け入れを行っていませんので、同列には論じられませんが。

例えば、日本と同一賃金になったベトナムユニクロに勤務している若者は、今と同じ給与で生活しにくい日本に渡って日本のユニクロで働こうとは思わないでしょう。
別な理由で日本に行って働く必要があるとしたら、ユニクロのシステムを理解しているからといって、ベトナムと同じ賃金の日本のユニクロよりは、日本の物価水準を多少は勘案した給与の日本企業に就職したいと思うのではないでしょうか。

世界同一賃金制度をとる多国籍企業は、移民の労働力からは嫌われることになると思います。(ユニクロの無い国からの移民はまた、多少は事情が異なるかもしれませんが)
心身を壊す人の事例が報道されるユニクロですが、同一賃金になったら、そこまで会社に捧げてくれる社員はだんだん少なくなっていくでしょうし、業務の細分化を行って、結局、パート労働者に頼らざるを得ない体制を作り上げていかなければ、先進国では組織が廻らなくなるのではないでしょうか。それは、例えば従業員のマック化のようなものです。