混合診療の問題(2)

さて、混合診療についてです。

保険診療として認められていない薬や治療方法を、病気で悩む本人や家族の要望で、保険が使えなくても自費で支払うので受けさせてもらいたいという場合です。

保険制度で対応しない薬や治療方法(自由診療)を患者さん側の希望で受けた場合、自由診療部分は全額患者負担になっても、保険診療部分は保険制度で負担してもらえると考えがちですが、自由診療保険診療が混在する混合診療厚生労働省は認めません。保険適用外でなく認めないという立場なのですね。
健康保険等の公費で受ける権利のある保険診療の費用まで、すべて自費で支払いなさいというのが、厚生労働省の論理です。

未認可の薬物を使ったり、日本では効果が認められていない療法を受けたりした場合、それらについては自費で払っても、健康保険診療枠で許可されているものは、保険負担してくれても良いではないかと思うのが一般的な感覚ではないかと思います。

しかし、混合診療における保険給付を求める訴訟は、2011年10月25日に最高裁において「保険外併用療養費制度は、保険医療の安全性や有効性の確保、患者の不当な負担防止を図るもので、混合診療禁止の原則が前提。混合診療を全額自己負担とする解釈は、健康保険法全体の整合性の観点から相当」として混合診療禁止を合法という初めての判断が下されました。

この判決に医師会活動に熱心な医師達は、やれやれといったところでしょうが、自費でも良いから国内で先進医療を受けたいという患者さんは少なくなく、また、海外では常識的な治療でも日本では行われていないために、医療サービスの受給側からすると、サービス受給の障壁になってしまっています。

この混合診療禁止の撤廃に向けて、熱い視線を送っているのが保険業界です。
混合診療解禁になれば、富裕層しか受けられない高度な先進医療が、医療機関のメニューとして載ってきます。
今までなら、そんなメニューは見る機会はなかったのですが。


余命1年という難病にかかった男性の妻が担当医に呼ばれます。

「先生、何とか夫を救う方法はないのでしょうか?」

「残念ですが、今の私達の医療技術では手の打ちようがありません」

「・・・・・・・・」


さて、混合診療解禁になったら

「ご主人の病気は難病に類するものです」

「えっ、助からないのですか?」

「1か月前まででしたら、私達にはお手上げでした。しかし、ご安心ください。こちらの安心治療Aコースでしたら、職場へ復帰できるまでの回復が期待できます」

「本当ですか?」

「ただし、このAコースは健康保険が使えない治療法を含んでおります。しかし、それ以外の治療には健康保険が適用されます。治療費は総額で、△千万円という金額になります」

「えぇー! そ、そんなお金は、用意できません!」

「生命保険会社の安心治療保険には加入されていないのですか?」

「加入していません。そんな保険があるなんて知りませんでした」

「困りましたね。それでは、○△銀行の、医療用安心いきいきローンをご利用なされたらいかがでしょうか」

さて、しばらくはお医者さんの治療以外の仕事も増えそうですが、保険会社や金融機関が業務拡大の大きな原石と狙っているのが、この混合診療解禁です。

そして、ここで、私達国民の素朴な感性と正反対の方向に動きそうなのが、生命保険会社の動きです。