混合診療の問題(4)

TPPに反対しているのは、農業関係者だけではなく、医療機関や医療機器メーカー関連の人達の中にも反対の声を上げる方が少なくないようです。

アメリカの先進医療や医療機器等が日本に入ってくるのを警戒してのことでしょう。
現在では高度の医療を受けられる人達は限られた富裕層です。
この方達は必要があれば海外に出向き、必要と思う医療を受けることがあります。
日本の水際で障壁を設けても、日本から障壁を飛び越えて医療サービスを受けるために海外に出ていけるのです。
この点、農業部門等の日常必需品が国境を行き来する事例とは似て非なる状況といえるでしょう。日本の水際に障壁があるからといって、いくらこだわりが強くて裕福でも、カナダ産のコーンや小麦をカナダにまで行って大量に食しようとする人もいないでしょう。(日本経済がバブルに浮かれた時、本場の札幌ラーメンを食べるために羽田から往復した人達もいたそうですが、経済は時間の質も簡単に変えてしまうのですね。いささか劣化しているような気もしますが)

こうしてみると、医療サービスの場合は、参入障壁がありますが、はたしてこれは守るべき障壁なのだろうかと思ってしまいます。
TPPに反対している人は、一体誰のために反対しているのでしょうか。
TPPに参加したら医療サービスの質が悪い方に変わると、脅すような言い方をする方もいますが、こういう考え方をする人というのは、一時国の保護政策に慣れてしまったために身動きがとりにくかった、護送船団方式に守られてきた金融・保険業界の姿と重ね合わせて見えます。

国が一つの期待値プラスのルールを作り、そのルールの中で自由競争と言うよりも企業を棲息させることに終始する。この中での生活に慣れてしまうと、ルールが変わることに恐怖感を抱きやすくなります。
共通ルールのハードルを下げて、より特色のある専門能力を持った人達の参入を促し、提供するサービスを国民が自由に選択できる土俵を作る。提供者は、それぞれが、国民のためになると信念を持ったサービスを提供し合って、切磋琢磨していくという姿は、自由主義社会の基本的な姿に思います。

サービスの受給者側からすると、単一のルールに則ったサービスではなく、それぞれに異なるサービスを提供する医療機関があって良いと思いますし、利用者がそれを自分の症状や経済事情で選択できるようにすれば良いので、何の不都合もないと思います。
護送船団的呪縛思考に慣れてしまうと、選択肢が多いことを苦痛と感じやすい場合もあるかと思いますが、慣れてしまえば選べないことよりもずっと快適だと気付くのではないでしょうか。

経済的に困難な人が十分な医療を受けられないような状況が考えられたら、そこに国が助成金なりの税の配分を行えば良いと思います。それこそが国の正当な役割であり、また、サービスを受給する国民にとって便利なように軌道修正をするのも国の重要な仕事です。
国がこの正当な役割を怠るのではないかという不安は、全く別次元のものですので、TPPに反対するのと同じくらいの熱意で国民のためにサービスを向上するためのアウトラインについて、国に積極的に提案していただきたいものです。